12月24日に、政府・与党の税制改正大綱が閣議決定されました。消費税増税等、重要な税制に関する改正が多数盛り込まれていますが、今回とりあげるのは、当コラムでも何度か触れた、税理士制度についてです。
日税連と公認会計士協会の資格付与をめぐるバトルに際して「結局、何も起こらないだろう」と、極めて緊張感のない予測をした者として、何らかのコメントをする責任があろうというものです。
税制改正に、実務補習の充実が盛り込まれる
はじめに率直に申し上げておかなくてはならないのは、今回の大綱では決して「何も起こっていない」わけではないということです。
大綱では、平成 29 年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者について、実務補習の研修で、一定の税法に関する研修を受講することとする旨の規定を設けるとされています。
そして、税法に関する研修を国税審議会が指定し、税法に属する試験科目の合格者と同程度の学識を習得することができる研修とすることが明記されています。国税審議会は日税連の幹部もメンバーとなっている国税庁の諮問機関です。
日税連と公認会計士協会には、そもそも会員に重なりが大きいこともあり、長年培った紐帯があります。今回の大綱策定に向けては、新聞紙上で舌戦を繰り広げるだけではなく、水面下で両団体の話し合いの場が持たれた模様。双方の言い分を勘案し、「落としどころ」を見出した印象です。
未来に向けた議論ができる制度に
注目しておきたいことは、今回の改正案は、資格付与そのものへ手を入れた改正ではないことです。実務補習・修了考査は、あくまで公認会計士になるために行うものであり、会計士となった人の税理士登録について障壁ができるわけではありません。
私は、公認会計士の税法研修を、実務に資するよう充実させていくことには大賛成です。いままでの研修が十分であったか否かには様々な意見があると思いますが、公認会計士に深い税法の知識が必要であることは当然であり、特に若い会計士には、税務への不安を解消するため、集中して徹底的に学びたいというニーズが多いことを肌で感じます。今回の決定は、妥当なところに落ち着いたのだと思います。
不満がないわけではありません。弁護士の税理士登録に関する扱いに触れられていないことには疑問を感じています。また、今回は議論の俎上に乗っていないOB税理士の能力担保についても将来的に課題が残っていると思います。
しかし、公認会計士と税理士の関係については、議論にひとつの止めが刺されたと思います。今後は、税制や税理士の社会的ニーズに変化があった場合、いちいち両士業団体が、「自動付与の廃止」と「公認会計士資格での税務」を持ち出して、あえていえば「不毛」なぶつかり合いをするのではなく、実務補習の内容を精査する議論に収斂されていくと思われます。
改正が実現した際は、同制度を納税者の利益に資するものとして有効に機能させていかなくてはなりません。そして、それは結局、私たち一人ひとりの会計人がプロとしての意識を高く持つことにかかっているのだと思います。