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【会計士Xの裏帳簿】会計人は、個人保証によらない融資への「突破力」を

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アベノミクスによる金融緩和で、市中に貨幣が供給されています。押し上げられた株価はここにきて一段落の感。今後の課題は、市場に資金需要が生じ、設備投資等にお金が回ることです。新規事業の開始、事業規模の拡大、あるいはベンチャー企業の立ち上げなど、新たな需要を創出しなければ、雇用の増加や賃金上昇にはつながりません。

日商、銀行協会がガイドライン策定

税理士が深く関わる中小企業に資金を供給する役割を果たすのは、主に銀行等の金融機関です。ベンチャーキャピタル等の直接金融の充実もさることながら、現実問題として、間接金融、つまり融資が主な資金供給のアクターとなることは間違いありません。

そこで大きな障害となるのが、中小企業の経営者の約7割に設定されているともいわれる経営者の個人保証。融資が経営者の財産の多寡に限定され、また事業に失敗すれば私生活まで崩壊する個人保証だけに依存していれば、事業者のチャレンジ精神が十全に発揮されなくなってしまいます。

この現状を受け、日本商工会議所と全国銀行協会は共同で「経営者保証に関するガイドライン研究会」を組織し、2013年12月、ガイドラインを公表しました。個人保証をとる場合の基準や、個人保証によらない融資制度について方向性を定めるものです。

個人保証によらない融資とは、在庫や売掛等の流動資産を担保とする融資、融資契約に財務上の特約条項(コベナンツ)を設定し、それを停止条件あるいは解除条件とする融資、金利の一定の上乗せによる融資等を指しています。ガイドラインでは「経営者保証の機能を代替する融資手法のメニューの充実を図ること」を金融機関に求めています。

「絵に描いた餅」に終わらせないために

そして、ガイドラインでは「税理士、公認会計士」の役割についても触れています。債務者の経営状況、資金使途、回収可能性等を金融機関が総合的に判断するために、経営者個人と法人の資産・経理の分離、適時適切な財務情報の提供、事業計画の策定に関わり、信頼性を担保する専門家として、会計人を位置づけているのです。

しかし、それらの融資手法の実施のためには、担保至上主義とも揶揄される日本の金融機関の事業に対する与信能力が必要となります。事業計画の内容からリスクをとって与信を行うことなく、漫然と個人保証を要求する姿勢を改めない限り、融資のメニューを増やしたところで、それは「絵に描いた餅」、「おためごかし」に過ぎません。

そして、企業の資金需要、また金融機関の積極的な与信は、「投資をすれば儲かるはず」という期待から生まれます。こういった心理、マクロな動きについての先行きは不透明です。「われわれが景気回復のためにできること」などと大上段に語るには、会計人の力は限定されているようにも感じられます。

私たちにできることは、まず事業展開を模索する個々の顧問先経営者に深く関わることです。会社の現状とともに、財務情報の重要性を経営者に知ってもらい、融資申請のための資料を磨き上げること。そして、新しい融資手法のラインナップを知った上で、説得的な交渉により金融機関の重い関門を一つ一つ突破していくこと。無力感に苛まれることもあるでしょうが、粘り強く手を打ち続けるのが務めでしょう。

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