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【会計士Xの裏帳簿】海外からの電子コンテンツ、消費税課税に問題山積

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2014年2月12日掲載

【会計士Xの裏帳簿】海外からの電子コンテンツ、消費税課税に問題山積

報道によると、政府は消費税の10%への引き上げを予定する2015年度をめどに、ネットを通じて海外に置かれたサーバから日本に提供される音楽や電子書籍、ソフトウェアなどへ消費課税を行う法整備へ向けた方針を示しています。

この税制は、消費税増税による税収の確保、また国際的な課税逃れへの対応という、国税にとっての2つの重大問題に対応するための重要施策となります。しかしその実現については、課題が山積みのようです。

国境をやすやす飛び越える「物品」

同制度では、日本の個人向けにコンテンツをネット配信する海外企業に、国税当局への登録、商品への課税、申告納税を義務化するとの案が示されています。

電子データは、税関を通さなくても国境を飛び越える「物品」です。現状、同じ市場で商売をしているといえる日本向けコンテンツであっても、電子データは従来の「輸入」の形をとらないため、海外企業と国内企業で価格差が生じています。増税でさらにこの傾向は進み、競争力の差が大きくなることは避けられません。

最終消費者が日本にいる場合は消費税を公平に課税すべき、との主張自体には頷けるところがあります。しかし、これを制度化するとなると難しい問題です。

日本向けコンテンツとはいえ、海外でダウンロードする人もいます。その場合、海外のサーバから配信されたコンテンツを海外で消費する形になり、日本の消費税が課税される根拠は乏しくなります。

電子データは形がありませんので、消費者がどこにいるかによって調整することは困難です。何らかの形で線を引き、一律に消費税を課すことになりますが、法的構成には強引さが拭えません。法整備が進んでいなかった原因はここにあると思われます。

新しい時代、「国税」の専門家の役割が変わる

また、政府の方針では、法人向けには個人とは別の制度を設けることが示唆されていることも注目すべきでしょう。国内・外の線引きの問題であるという点で、個人で起こりうる問題と同質ではありますが、法人では一層、そのいびつさが増します。

例えば、日本の市場へ向けたソフトウェアを購入する企業には、日本企業の海外法人や、日本での事業展開のために海外に置かれた国外の会社も多くあり、課税、また申告・納税はさらに困難。企業団体の反対など、政治的にもハードルが高くなりそうです。

こういった企業間の取引については、課税対象とした上で、最終的に国内で仕入れを行った事業者に申告・納税義務を転換する「リバースチャージ方式」も検討されているようです。しかし、かなり複雑な税制であり、私も恥ずかしながら仕組み、運用を理解できていない面があります。

この問題は消費税に限らず、国境を前提とした「国税」の課税手法の限界も示していると感じるところです。国家間の露骨な「税の取り合い」の側面があり、国内法だけではなく、租税条約等他国との調整も必須となります。

ネットビジネスの発展、グローバル化による企業の海外展開が進む中、日本の国家資格である税理士や会計士も、好むと好まざるとにかかわらず、国際税務に目を向けなければならない時代が来ているのだと痛感します。

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