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【会計士Xの裏帳簿】法人税引き下げ議論 税理士と中小企業は何を見るべきか

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法人税引き下げの議論が活発化してきました。1月20日に行われた経済財政諮問会議で、現行の実効税率35.64%から、約10%の引き下げ案が取り上げられました。また、政府税調でも、引き下げへ向けた検討チームが組織されることになっています。

消費税アップが交換条件になる?

法人税減税の主な目的は、いうまでもなく経済の活性化。諸外国の法人税率も考慮しながら、企業活動を阻害せず、競争力を高める税率を設定する、というものです。

しかし、法人減税には財政の観点からの反論もあります。麻生財務大臣は同会議にあたり、法人減税の実現性について釘を指す「法人課税の改革にあたって」と題したペーパーを提出しました。

ペーパーの内容は、いかにも財務相らしいというべきか、法人税を10%引き下げれば、「税収全体の1割に当たる約5兆円の減収」となると試算。その代わりとなる財源の確保なくして実施することはできないとし、財源確保のため、法人税の課税ベース拡大、他税目での増収策が必須であると強調しています。

「課税ベース拡大」のために今後議論されるとみられるものの一つが、欠損金の繰越控除の縮小。適用期限の短縮や控除額の上限設定などが検討される見通しです。また、「他税目の増収策」との言葉には、現在、8%から10%への引き上げがペンディングされている消費増税の確実な実施を含意しているようにも見えます。

顧問先にとってのメリット・デメリットは?

税理士として考えなければならないのは、関与先となっている中小企業にとって法人減税、またその他の税制の変更がどのような恩恵、またデメリットをもたらすかということです。

現在、法人税が課税されている法人は20%台。7割以上が赤字申告です。黒字を出しているか否かは企業規模で決まるわけではありませんが、多くの中小企業が今の時点で法人税が課されていない現状が見て取れます。

法人減税による理想的な流れは、現在「重税感」を感じている企業を身軽にし、景気を拡大。その上げ潮に乗り、現在の赤字企業を含めた会社も利益を得て法人税を納めるようになる、ということになります。

それに加え、潜在的な減収要因を塞ぐ繰越控除縮小などの課税ベース拡大の方策、他税目での増税を行った場合の影響は見逃せません。消費増税は、当コラムでも何度か指摘した下請代金、また肝心の景気上昇にマイナスの影響があります。現在赤字である企業にとっては、短期的には減税の恩恵はなく、将来の景気回復と自社の業績アップを祈りつつ、増収策による衝撃に耐える時間ができることになります。

法人減税自体は歓迎する事業者、税理士は多いでしょう。しかし、税制はひとつの税目のみで語れるものではありません。目の前の会社経営に、それぞれの税制の変更がどのような影響を及ぼすのか、ということを一つ一つ注視していかなければならないでしょう。

 

カイケイ・ファン ナビゲーターによるコメント

カイケイ・ファンナビゲーター 小林 典子(MS-japanコンサルタント)

カイケイ・ファンナビゲーター
(MS-japanコンサルタント)
小林 典子

税制改正のタイミングでは、一時的にではあるものの、会計分野の求人が少し減 少する傾向があります。税制の変更が、人員計画や採用に直接影響するほど、経 営にインパクトをもたらすことを如実に表している現象かと思います。
現在は、アベノミクスだと騒がれていますが、目先の景気変動以上に、中長期的 な経済の活性化で景気拡大されることを期待したいですね。 そのためにも、会計人の活躍が必要です!

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