前回の株価鑑定の説明から
前回のコラムで、株式の鑑定評価の説明を一般向けに提案した。何かの参考にしていただけたと期待したいが、筆者が思う公認会計士の傾向というものがある。
それは「一般の方には理解できない説明をする傾向がある」という点だ。
勿論、人によるし、悪気はない、むしろ誠実なことはよくわかる。ただ、偽らざる本音として「先生、それ私でもわかりません……(汗)」と感じる説明があることも事実だ。 そこで提案したいのだが、会計用語や公認会計士の業務について「一般の方に伝わる説明」というものを普段から準備されてはいかがかと思う。
なお、この提案は筆者も色々な公認会計士の方から不動産鑑定の案件を頂戴しているので、公認会計士の方々にご発展いただくための恩返しの意味も込めた前向きな提案と捉えていただければ幸いである。
何故そのような傾向になっているのか
結論から言うと、筆者を含む殆どの公認会計士は、会計のプロとしての第一歩が監査法人での監査実務であるからであろう。つまり、監査業務は経理という会計のプロを相手にするため「会計の知識に明るくない一般の方向け」の説明という局面が生じない。その結果、「一般の方に伝わる説明」を考えなくなるのではと思う。
本質的な理解とは、シンプルに説明できるか
難しいことを難しく説明することは、その難しいことを理解していればそれほど困難ではない。ただ、難しいことを簡単に説明するのは、本質的に理解していないと困難である。もっとも、公認会計士であれば、難しいことの理解は会計業務であれば、よほどマニアックな内容でない限りはできているはずだ。では何が問題かというと、「簡単に説明する」の部分であろう。そして、何故「簡単に説明する」がひっかかるかというと、監査業務で培ってきた誠実性に基づいて、「全範囲を網羅した説明をしようとする」点にあるのではないだろうか。
例えば「監査」についての説明の仕方
これは筆者の表現であり、決してこれが正解ではない。その上で「監査」の一般向け説明を開陳させていただくと、こんな感じであろうか。
「ある程度、社会的に重要な会社が決算する時に、例えば儲かっていないのに儲かっているように嘘をつくと色々な所に迷惑がかかるので、重要な会社に限り嘘をついていないかチェックすること」
勿論筆者も、細かい語弊がある点は承知している。さらには、「重要」の内容も細かく説明した方がより正確な点も理解している。
ただ、その上で、筆者なら上記の説明とするであろう。なぜなら、あまりにも真面目に全範囲をカバーして説明すると、一般の方は逆に混乱するからである。
筆者は考える。一般の方向けの説明は、「全範囲をカバー」するのではなく、「ある一点を、直観的にわかるようにイメージさせる」ことが肝要だと。
独立や転職する時の武器になる
「長ったらしい説明」は、実は本人が全てを言いたいだけで、折角発言しても相手に伝わらない場合が多い。それならば逆に、一点だけに絞った「イメージの説明」で要旨を伝えた方が効果的であると筆者は考える。
このサイトをご覧になっている方の中には転職や独立を考えておられる方もいらっしゃるであろうが、上記の話は転職時の面接や、転職後の業務にも応用が利く話ではないだろうか。何かの参考にしていただければ幸甚である。
(文/冨田建 公認会計士・不動産鑑定士、記事提供/株式会社エスタイル)