莫大な額の保険金請求権が眠っている!?
東京海上日動火災保険が提供する自動車保険の保険金不払い問題が取り沙汰されています。問題となっているのは、保険の主契約に付随し、事故で死亡あるいは負傷させた相手へ見舞金等を支払う場合の「対人臨時費用」の補償などです。発表によると、14万~15万件(14年2月現在)もの不払いがあったとみられています。
自動車事故を起こした際に保険会社に通知すると、主契約で被害者に支払う損害賠償について保険が適用されます。今回問題となった見舞金等の特約は、それとは別に請求を行わなくてはならない仕組みとなっていました。
同じ事故による補償について、特約のために改めて請求が必要であるということは、契約者にとってわかりにくいところです。同社では、適用できる特約については顧客へ請求を勧める運用となっていたそうですが、約款の記述含め、この部分の扱いがあやふやであったことが問題の発端になったと思われます。
保険契約の複雑さは、税理士の頭を悩ませる問題でもあります。自動車保険はあまり税理士業務と深く関連しているとはいえませんが、生命保険等で、顧問先の社長が保険募集人との「お付き合い」で、勧められるままの内容で保険に加入し、契約内容を理解していないことは非常に多くあります。
保険金請求権の権利行使を助ける「第三者」の目
相続では、遺された相続人が被相続人の保険契約を把握していないケースもあります。被相続人すら完全に理解していないものを、配偶者や子らが知っているはずもありません。税理士としては「とにかく、保険証書らしきものがあれば全部持ってきてください」と言わざるを得なくなります。
契約者が亡くなった時だけではありません。契約者が認知症となり判断能力が著しく下がってしまい、医療保険や生命保険の特約などの請求がままならなくなることもあります。また、火事や地震など災害に関する保険では、保険証書自体が消失してしまうことも考えられます。
今回の事件では、保険会社の姿勢が問われていますが、まず契約者が自分の保険の内容をしっかり理解する必要があります。そして、自分だけでなく周りの人達と知識を共有しておくことがとても重要です。周りの人が、せめて契約している保険会社だけでも知っていれば、事が起こったときに保険会社に契約内容を照会することもできます。それができれば、契約について露骨に隠されることがないかぎり、ある程度正確に保険金の請求をすることができます。
それに加えて、保険契約者がどのような状態になったとしても、保険会社とは別に、保険に関する知識を持ち、請求について適切にアドバイスできる第三者的存在がいればベストです。この点で、顧問先と定期的に顔を合わせ、普段からその人のお金に関する状況を把握できる税理士は適任です。保険金で困らないため、「最後の砦」になれる存在だといえるでしょう。