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【会計士Xの裏帳簿】減価償却の定率法廃止は何を目的とするものなのか

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政府税制調査会で、法人減税の代替財源として減価償却の定率法を廃止し、定額法に一本化する案が浮上していると報道されています。減価償却については、税理士の実務に直結しますので、注目されている方も多いでしょう。

税収アップと設備投資支援のジレンマ

定率法は、簡単に言うと、減価償却を前倒しして行える制度。複数年で償却される固定資産全体の損金額が大きくなるわけではありませんが、設備投資を行う際、今期の利益を勘案しながら判断することで節税策になっています。

定率法を廃止することでどれほどの増収になるのかということは見当がつきませんが、同時に議論されている欠損金の繰越控除の縮小とともに、法人減税を見据えて節税の余地を狭め、単年の業績に応じて確実に課税を行うための方策と言えます。

ここで問題となるのは、税法上の減価償却制度が持つ経済政策の側面です。定率法は初年に大きく損金処理ができるため、設備投資に弾みがつくと考えられます。またキャッシュフローの確保につながり、次の投資を打ちやすくなります。

現在、金融緩和をテコに市場に資金が供給されていますが、今後の景気の試金石となるのがまさに設備投資。定率法廃止が、設備投資の重しになってしまうのではないかとの声は当然あるでしょう。中小企業政策として残す案なども含め、これから議論が活発化すると予想されます。

定率法廃止は財務会計への影響も大きい

定率法の廃止については、税収確保の側面と経済政策としての側面のほかに、もうひとつの観点があります。IFRSの適用などを含む、日本の会計基準との関係です。

減価償却の仕方は、それぞれの固定資産の実情に合わせて決めるのが基本的な考え方ですが、多くの会社が法人税法に則って耐用年数や償却方法を決めています。しかし、税務上の定率法の経済政策的側面は、財務会計の考え方とは相反する部分があります。

定額法よりも定率法が実情に合っている場合もあるでしょうが、税法上の償却率が250%になったり、200%になったり、というこれまでの改正の過程は、経済政策の色彩が強かったといえます。その変化が、外部に公表する財務諸表に影響することは、会計理論上は望ましい状況とは言い難いものがあります。今議論されている定率法の廃止は、日本企業の特徴である「税法に則った減価償却」の仕組みを一気に整理してしまおうという意図が見えないこともありません。

定率法の扱いについて考える際は、財政政策、経済政策、会計基準の整備という性格の異なる論点を整理し、それぞれへのメリット・デメリットを考えながら、あるべき姿を模索していく必要があるのだと思います。

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