法人税務で、税理士が経営者からよく聞かれるテーマのひとつが、交際費の損金算入について。平成26年度税制改正で交際費の損金算入の枠が拡充されていることもあり、さらに興味が増していると感じます。
今回の改正では、中小法人は800万円までの交際費、または社外の人との飲食に支出した交際費の50%が損金にできます。従来、交際費が全額不算入だった大企業は、800万円の枠はありませんが、飲食のために支出する費用の50%を損金にできるようになりました。また、大企業であっても1人あたり5千円までの飲食であれば損金にできる「5千円基準」は存続されました。
26年度改正は「飲食」がキーワード
ところで、以前あるオフィス街に近い繁華街で面白い店を見たことがあります。いわゆる「ガールズバー」なのですが、1人4千円台後半のセット料金を設定し「5千円基準にぴったり」という意味の言葉を店先に掲示していたのです。複雑な税制を逆手に取り、広告として使う手法に「なかなかやるな」と感心しました。
今回5千円基準が存続し、さらに50%損金の新制度が作られたことで、特に大企業の間で「飲食」による接待への注目が増すと思われます。税制を利用した広告の効果は増しそうです。
例えば、交際費の損金算入で非常に重要なポイントとして領収書の記述があります。よく、飲食店で「宛名は『上様』でよろしいですか?」といったことを聞かれることもありますが、税務上は避けたい表記です。
そこで、交際費税制の情報を軽く紹介しながら「税務で使える領収書を発行します」と掲示してみる、また、普段ちょっと頼みにくい「割り勘」の領収書の発行などに「積極的に対応します」といったアピールを行うのもよいかもしれません。
「ビジネスユーズ」へ理解のある店を演出
もちろん、飲食店が領収書を発行するのは当然のことです。また、飲食が一人5千円以内で収まる店は星の数ほどあります。しかし、大切なのは見せ方です。当たり前のことでも、積極的に広告することで「得意先と会食するならあの店」と「ビジネス御用達」のイメージが作り上げられるのではないでしょうか。
もし、その広告が好感触であると感じたら、席の一部をパーテションで間仕切りしたり、ブロードバンド環境や電源を揃えたりして、簡単な商談スペースを作るといった「次の一手」も考えられます。
税理士による飲食業のサポートは、交際費に関する知識を使うことによって、会計税務など後方支援的な業務だけではなく、広告戦略、メニュー・価格の提案、事業展開に関するコンサルティング等に発展する可能性があるのではないかと想像しています。