消費税の話題でもちきりの4月からの税制ですが、地味ながら事業者にとって重要な改正があります。領収書等の作成にかかる印紙税の非課税枠が3万円から5万円未満に引き上げられ、印紙を貼り付けなくてもよい文書が増えたのです。
税理士業務は「営業」ではない!?
印紙税は国税の一つではあるのですが、印紙そのもののレトロなデザインもあいまって、古めかしさが漂う税目です。「私的な文書の作成に課税する合理性があるのか」と存在意義自体を問う声もよく聞きます。
税理士にとっても、印紙税は軽視されがちな存在。印紙は事業者が購入し、貼付することで納税するものですから、申告を税理士が代理することはありません。業務としては、貼付の条件や租税公課の会計処理についての質問に答えるくらいです。
税理士が印紙税について注目しづらい理由はもう一つあります。そもそも、税理士が関与先に発行する領収書には印紙を貼る必要がないことです。
印紙税は「営業に関しない受取書」には非課税。そして、税理士を含む「弁護士等」が作成する受取書は営業に関しないものとされています。そのため「印紙って自分ではほとんど使ったことないんだよね」という税理士は実は多いのです。
これはまるで「医者の不養生」のような話。課税文書を日常的に作成する顧問先事業者のほうが印紙について詳しいとなれば、税金の専門家もかたなしです。
印紙についてビジネス目線でアドバイスを
しかし、税理士が印紙について顧問先にアドバイスすべきことがないわけではありません。
例えば、消費税法上、印紙の購入は非課税仕入のため仕入控除ができません。しかし、これは郵便局で印紙を買った場合。金券ショップで買った時には消費税がかかるため、控除が可能となり、わずかながら節税になります。
そして、印紙税そのものにも節税の方法があります。最も有効な手段が「電子化」。領収書や契約書をPDF等の電子ファイルで作成すると、印紙税法上の「文書」にならないため印紙を貼る必要はありません(そもそも貼れないのですが)。ここにも印紙税の「古めかしさ」がよく表れているといえます。もちろん、ペーパーレスは節税以外のメリットも期待できるものです。税理士の提案が業務システムを改善するきっかけにもなるかもしれません。
印紙税法上「営業」に当たらないとされる税理士業務ですが、それがビジネスの実情に無頓着になる理由になってはいけません。事業者のニーズを探るためにも、もう一度この「マイナーな国税」に注目してみる必要がありそうです。