会計業界において、転職はキャリア形成上のターニングポイントです。「スキルアップ」「ワークライフバランスの確保」「年収アップ」等、様々な動機・背景や希望があり、毎年多くの方が転職活動をされています。一方で、残念ながら希望通りの転職にならなかった方も多いのが会計業界。今回の会計トピックスでは、あえて転職失敗事例をご紹介し、転職活動の留意点などもご案内が出来ればと思います。
理想の環境を手に入れたはずなのに、まさかこんなことに!? 後継者不在の小規模会計事務所の落とし穴
【今回の失敗者】
Gさん、37歳/男性
税理士試験3科目合格 (簿記論 財務諸表論、消費税法)
Gさんは税理士資格を目指す3科目合格者です。一社目は個人の会計事務所で零細企業の記帳代行や税務相談業務を経験し、その後、中堅規模の税理士法人にて組織再編や連結納税などのスポット業務にも携わっていらっしゃいましたが、慢性的に忙しい状況下で試験勉強には手が付けられないでいました。そこで、Gさんは「試験勉強にも時間が割ける」ことと「年収は維持したい」という希望が満たせる職場を探し転職活動をされたそうです。
税理士試験に集中するため、残業が少ない会計事務所を優先して応募
Gさんは将来的に税理士として独立することを目指していましたので、残りの科目に関しても早期に取得できそうな環境を重要視されていました。そこで、経営状況が安定していて残業が少ないという”落ち着いた社風”の会計事務所に入所することを希望し、転職活動を開始されました。
転職活動の結果、最終的には残業時間が少ない地場の個人会計事務所から内定を獲得、入社決めました。因みに入社した会計事務所の所長は、経験豊富で業界歴も長く60代後半の税理士だったそうです。Gさんとしても「こういった事務所ならば新規クライアントも少ないだろうし、安定した環境で勉強にも時間が割けるはず」と考えて、細かな点は確認せずに入社を決意されたとのことです。
因みに入社した会計事務所は、実際に残業時間も少なく安定した環境だったようで、Gさんとしても目的が叶い、安心して働くことができていたとのことです。
でもそれも長くは続きませんでした・・・
所長がダウン!まさか、後継者問題に自分が直面するなんて…
上記の通り、満足のいく転職を果たしたGさんですが、ある日その状況が一変することになります。
翌年の6月、Gさんとしても試験勉強の最終調整段階に入り、いざラスト1科目を是が非でも勝ち取るぞ、と意気込んでいた頃のことです。
なんと所長が急に倒れてしまい、これまで通りの事務所運営が難しくなってしまったのです。Gさんを含め、事務所の職員はクライアントからの問い合わせに対応をする一方、所長が運ばれた病院にお見舞いに行き、適宜情報共有をする必要にかられたのでした。これではGさんも試験勉強どころではありません。しかも、更に悪いことに、Gさんが勤める会計事務所には税理士資格者が先生しかおらず、後継ぎの方もいらっしゃらなかったのです。今までスタッフとして担当業務をこなすだけで良かったGさんですが、このようなアクシデントから事務所の後継者問題にも巻き込まれる状況に陥ってしまいました。
意外と見落としがち!?安定風土と廃業リスクは表裏一体
今回Gさんが直面したトラブルは決して他人事ではありません。
第5回数税理士実態調査(実施:日本税理士会連合会実)の結果では、60代以上の税理士が全体の52.9%と半数を超えているというデータが出ており、税理士の高齢化が深刻化していることを考えると、今後の税理士業界においてはこのような事象は頻繁に発生する可能性が高いと言えます。
因みに上記の調査は10年に1度実施されており、最新の調査は今年(平成26年)とのことです。恐らく60代以上の税理士比率は更に高くなっているはずですので、今後は後継者問題に悩む事務所が急増するのではないかと推察されます。
今回の事例でご紹介をさせて頂いたGさんは、「安定した社風」「残業時間が少ない」という要素を重視して転職先を探していましたが、実は上記要素に「所長が高齢」「後継者不在」というキーワードを加えると、どんなに良い事務所であっても廃業リスクは高まってしまいます。たとえ理想の就業環境であっても、高齢化事務所においては、所長に万一の事があった際には安定どころか現状維持さえも難しい状況に陥ってしまうということを忘れてはなりません。
今回の事例のような会計事務所に入所する際には、他に税理士がいるのか、後継者候補はいるのか、というポイントも忘れずに確認して頂くことをお勧め致します。
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(文/シニアコンサルタント)