消費税増税をきっかけとした不適正な下請取引を防ぐため、公正取引委員会では、下請法、また特別法である消費税転嫁対策特別措置法等の取締を強化していますが、先日、そのことを肌で感じた出来事がありました。私の関与先の事業者に下請法に関する調査票が届いたのです。
法令違反の取引の有無をヒヤリング
今回調査対象となったのはある個人事業主。自宅に調査票が届き、私に「どうすればいいのでしょうか」と相談してきました。(ちなみに、法人ではないのですが、なぜか宛名に「代表取締役」という肩書きがついていました)
調査票は、親事業者の社名が明記され、その業者が下請法で禁止される、継続的取引の「減額」や「買いたたき」を行っていないか、そして消費税分を転嫁しているかについて、ヒヤリングする内容。消費税に関する回答は、消費税転嫁対策特別措置法の調査情報として使用することも示されていました。
親事業者に申告はバレないのか
私は「ありのままに書けば良いのではないですか」とアドバイスしておいたのですが、その方は「そもそも、なぜうちが選ばれたのでしょうか」と不思議そうな様子。
下請法の調査では、まず親事業者への事前調査で、下請事業者のリストを提出させます。そして、そのリストの中からランダムにピックアップした業者に、取引の内容に関する調査を行っています。その旨を教えると、その方はこう言いました。
「それだと、親事業者に再調査が入ったとき、誰が申告したかバレバレじゃないですか」
これには困ってしまいました。幸いにも指定された親事業者は問題ある取引を行っていなかったようですが、下請事業者の現実をまざまざと見せつけられた気がしました。行政も、回答により下請事業者に不利益が及ばないように対処するとしていますが、申告しにくい状況があるのも確かなようです。
再増税、物価高騰で中小企業はどうなる
私は下請法、また帳簿方式における消費税の価格転嫁の違反に関して、現在の調査はほとんど唯一の方法ではないかと思います。親事業者への下請法等の法令の周知、心理的効果もかなり高いでしょう。しかし、下請事業者にとっても、回答に心理的な制約があるということを忘れてはなりません。
経済産業省の調べによると、消費税増税後の転嫁状況について、事業者間取引で82.7%が「全て転嫁できている」と回答しています。しかし、これがどれだけの実情を表しているのか、微妙です。下請法の違反事例にあたるかどうかはともかく、物価高騰による原価高が下請代金にどのように反映しているかも気になるところです。消費再増税が現実味を増している今、中小事業者に待ち構える状況には大きな不安を感じます。
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