先日、会計検査院から国税庁へ、来日して日本で報酬を得る外国人のプロスポーツ選手や芸能人らが受け取った報酬に対する消費税が適正に納税されていないとの指摘がありました。国際税務でよく話題になる、国家間の資本移動による租税回避ではなく、日本で活動する人の国内の課税についてすら適切に行えていない実態があるようです。
非居住者の売上を捕捉する難しさ
外国人が日本で収入を得た場合に課される税金として、まず所得税が挙げられます。非居住者の所得税は、報酬の支払者が源泉徴収を行うため、業者がしっかりと処理をしさえすれば課税は比較的スムーズ。しかし、今回問題とされた消費税には困難があります。
非居住の個人であっても、前々年の報酬が１千万円を超えた場合、事業者として消費税を申告・納税する必要があります。そこでまず問題となるのが、非居住者の基準年の売上高をどのように捕捉するのかということです。
今回の指摘を行うため、検査院は報道されている年俸、賞金などをもとに、外国人スポーツ選手やタレントらを抽出し、国税庁の納税者情報と照合して課税状況を調べたそうです。国の機関ですら、報道ベースの情報が頼りになっています。
外国での調査は捕捉よりも困難
税務当局であれば、少なくとも所得税を納税している外国人については、丁寧に調べていけば売上高を推計できるでしょう。しかし、母国に帰国した外国人の申告漏れの実態を知るための税務調査をどう行うかは、さらに難しい問題。調査権限の面で限界があります。
外国人の消費税の問題は、過去にもニュースになっています。2008年ごろに、格闘技「K-1」の外国人トップ選手に消費税の申告漏れが発覚しました。当時絶大な人気を誇っていたK-1は、ファイトマネーが高騰。外国人選手が数年にわたり日本で活動したため、一気に税金問題が噴出したのです。この時、どのように調査等が行われたのかは不明ですが、おそらく試合日程などをもとに、選手が来日した際を狙って当局が直接事情を聞いたのではないかと推察されます。
今回、全く同じ問題が広範囲にわたって存在することが指摘されたことは、税務当局がこの問題の存在を把握していながら、課税や調査、徴収の手法をほとんど確立できていないことを示しています。
制度の周知、納税管理人の就任で税理士が活躍
納税義務者が申告納税期に日本にいない場合、非居住者は国内で納税管理人を選任し、税務を代理してもらうことになります。国際税務を得意とする税理士事務所では、外国の個人事業主の納税管理人に就任する業務も行っているようです。
外国人スポーツ選手、タレントが日本の税制について詳しく知っているとは期待できません。契約に強い弁護士が代理人としてついているとは思いますが、税法に関して知識があるかは疑問です。当局だけでなく、税理士が制度の周知と税実務を積極的に行うことが重要であると言えるでしょう。
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