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【トップ会計人が語る】会計業界は”女性だからこそ”のメリットも大きい

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東京・千代田区 税理士法人 福島会計
代表社員 公認税理士 福島 美由紀 氏
慶應義塾大学文学部英米文学科を卒業後、大手商社経理部に就職。結婚を期に退社、出産。子育ての一方で簿記の勉強を始め、1990年に税理士試験に合格し、同業務に携わる。2002年に福島会計を設立。経営革新支援機関として企業が抱えるさまざまな悩みをサポートする法人事務所として成長し続けている。

経営相談に強い会計事務所として知られ、開業後10年で1件も倒産した会社を出したことがないという福島会計。2013年には代表社員である福島美由紀さんの実娘・田上沙織さんも入所し、母娘が在所する珍しい会計事務所としても業界の注目を集めています。

会計業界にはまだまだ女性の先生が少ないと思います、その中で福島先生は第一線でご活躍されています。

福島 確かに女性の方は少ない業界です。今では登録税理士のうちの15%ほどが女性であり、わずか6~7%程度だった数年前と比べずいぶんと増えましたが、もっと多くの女性が活躍してもよいのにと思います。私のように独立している女性事務所というのも、まだまだ少ないですね。
当事務所は女性の割合も多く、昨年1月からは娘である田上沙織も加わりました。娘は以前、大手監査法人に入所しておりましたが、そちらを退職後にもともと好きだった海外旅行で各国を旅する中で、改めて日本を元気にしたいという気持ちになっていったようです。それで色々と考えた末、うちに来てくれました。海の向こうで抱いた「日本を元気にしたい」という熱い思いを、当事務所なら果たせるのではないかと話したんです。

田上 正直、まさか母と同じ場所で働くことになるとは考えていませんでした。新しい世界での仕事はとても充実していて、やりがいを感じていますが、親子だからこそ大変な部分もあります。母のやり方を知っているからこそ私も口を出してしまいますし、母からも通常の部下以上の話を持ちかけられて。だんだんと秘書のようになってきたことがあり、しっかり線引しようと心がけるようになりました。

福島 つい本気になってしまって(笑)。仕事の上で大切な仲間ですし、やはり身内という側面でも状況を感じ取ってくれて、私が無理をしているようなときは忌憚なく意見をいってもらえるのはありがたいと感じています。

田上 普通の上司ならグッとこらえて飲み込むようなことも、言わずにはいられなくなるというのはありますね。この業界では、父と息子の二代で経営することはあっても、私達のように母と娘が同じ事務所にいるのは珍しいと聞いています。女性には結婚や出産というライフイベントがあり、それらをケアしつつビジネスにもしっかり打ち込むにはどうしたらいいのか、どの事務所よりも真剣に考えて対応しているのは女性の代表ならでは、だと思います。

身近で働かれる母親の姿を見て、社会で活躍する同じ女性としてどうお感じになりますか?

田上 私が未成年のうちは、家庭中心でいてくれました。たまに仕事が忙しくなるとお弁当が手抜きになることもありましたけど(笑)。
でも私が20歳になり、母が事務所を設立してからはガラッと変わって、それからはアクセル踏みっぱなしですね。その様子を見て、すごく賢い生き方をしているなと感じました。女性の働き方にはいろいろな方法や考えがあると思いますが、少なくとも私は子供の頃に寂しい思いをした記憶はありませんし、母のやり方はものすごくうまいやり方のひとつだと思います。
友人から「沙織のお母さんはすごいよね」と言われることがあり、私も確かにそうなのかなと感じています。

福島 子育てが落ち着いたあとでもこうしてビジネスができるのも、税理士のひとつのメリットだと思います。

田上 それに企業も社会も、女性の多様な働き方を受け入れられるようでなければいけないと思いますし、母はそれをすでに実践していて、器量の大きさを感じます。

改めて、福島会計と先生のこれまでを教えて下さい。

福島 私はもともと会計事務所とはまったく縁のない人間で、大学では英文科に在籍し、卒業後は商社に入社しました。適性検査を受けた結果、なぜだか経理部に配属されることになり、そこではじめて経理の勉強をはじめたのです。明快な正解がない文系と違って、数字をパズルのようにはめていくところはおもしろいなと感じましたね。
ただ、しばらくして寿退社し、娘も生まれたので主婦に。最初は必死に子育てする日々でしたが、2歳にもなると夜に時間がとれるようになり、せっかくだからと簿記の勉強をはじめてみたのです。主人は会社を経営してしましたので、何かの役に立つかもしれないという考えもありました。勉強をはじめたらこれが楽しくて、どうせならと資格取得を目指し、2年で簿記1級まで取りました。その後、「簿記1級があるなら税務士試験を目指したら?」といってくれた方がいて、そのままの流れで簿財、法人税法というように勉強を続けていきました。
実務経験がありませんでしたので、会計事務所へ行こうと考え、そうしているうちに税理士試験にも合格し、会計事務所で働き始めることになりました。下の子が生まれたばかりだったので、週2回、一日4~5時間程度のパート勤務でした。それからは子供の成長と合わせ少しずつ勤務時間を伸ばし、下の子が中学生になった頃にはフルタイムで働くようになってました。
そんな中、2002年には税理士法が変わったことや子供も手を離れたこともあって、独立することになりました。

独立を決意されたのはなぜでしょうか?

福島 もともと独立の意欲はなかったんです。ただ、それまでは大手会計事務所に属していたのですが、分業制が徹底していたので資産税を最初から最後まで経験したいと思ってもなかなかやらせてもらえなかったんですね。また、パート勤務ですし税理士会の年会費も高いですから、実は10年近く資格を持ちつつも税理士登録していない状態だったのですが、税理士未登録の女性というと中小企業の社長さんが相手にしてくれないケースも少なくありませんでした。それでやはり税理士登録をしようということになり、さらに税理士法が変わったタイミングもあったので、じゃあ独立しちゃいましょうと。夫がおりますので、稼がなくては!という気負いはなかったんですけどね。
ただ、お世話になった先生からは、「日本一の負けず嫌い」ってよく言われました。言われたことに対して「出来ない」とはいいたくなくて、何事も何とかしようと頑張ってしまう性格なんです。そういった努力をしながらお客様とのご縁を大事に精一杯やってきたことのひとつひとつが、今に生きていると思います。事務所を大きくしてやろう!という大それた野望はなくて、とにかくお客様に満足していただけるサービスを提供したいと願っています。

独立はスムーズに運んだのでしょうか?

福島 それまで業界全体で取り決めがあった税理士費用が自由になり、営業活動が活発化したこともあって、独立した翌年にはホームページを立ち上げて積極的に動きました。これからの時代はwebを駆使した集客活動が絶対に必要になると考えたのも割と早かったので、業界内でも先駆け的存在だったと思います。また、会計ソフト「弥生会計」が行う「弥生PAP」という、企業と会計事務所を結ぶプログラムにも早い段階から参画していたことで、たくさんの企業様とのお付き合いが生まれました。もちろん独立前からのツテもあり、webの効果だけで急に大きくなったわけではありませんが。
今では独立から14年以上が経ち、福島会計という存在感が確かなものになってきたと思います。3年くらい前から中小企業大学校や商工会議所、信用保証協会などから声をかけていただいて、セミナー講師を頼まれるようになりましたし、2014年6月には御茶ノ水に事務所を移転し、事務所の規模も大きくなってそれなりのイメージを持っていただけるようになったと思います。

この業界に長く在籍されていて、お感じになることはありますか?

福島 webを活用した営業宣伝が加熱した一時期、低価格競争のような状況に陥ってしまったことがありましたが、それは自分で自分の首を絞めるようなこと。逆に、安そうに見せて集客し、よくわからない項目を追加で提示して少しでも多くの報酬を受け取ろうとするところもあり、そうした不明瞭さを嫌ってうちに移ってこられる企業様も少なくありません。受けたサービスと支払う費用に差異を感じ、満足感を得られないのだと思います。集客の際の打ち出し方は様々ですが、そのあたりをしっかりと意識していかなければならないでしょう。
また、特に中小企業のお客様が抱える悩みは、会計や税務だけにとどまらないことが多いのも事実です。税務で申告書を作るだけでは、お客様の本当のニーズには応えられません。これまで以上に、お客様のニーズを先読みしてワンストップでソリューションを提供できる体制を拡充していかなければ、会計業界の成長は望めないと思います。インターネットを使って人件費の安い海外で記帳代行するサービスなども、今後増えてくる可能性がありますから。
昨今、会計士や税理士の資格を取る人が減ってきているというのは衝撃です。新しいことにチャレンジする若手が、もっともっと増えてくるといいのですが…

税理士試験受験者数の減少を憂慮する声は小さくありません。

福島 会計業界は、”若い”ことはデメリットではないと思うんです。税制は毎年毎年変わりますし、ツールも新しいものがどんどん生まれてきます。いくらベテランの先生でも、勉強をおろそかにしているとダメなんです。それに、最初から企業のトップの方とお会いできるという仕事はなかなかありません。こうした方からはいろいろな刺激を受けることが多く、もしかしたら自分の人生にまで大きな影響を与えてくれる出会いがあるかもしれません。
それに女性にとっては、しっかりと子育てに専念したあと、独立して働けるという希少な仕事だと思います。これからの時代、女性はもっと社会へと進出していくようになると思いますが、資格があれば私のように独立して働くこともできます。子供というのはいずれ親元を離れていくものですから、その時を見越して、若いうちから資格を取っておくのもいいのではないでしょうか。

田上 私もライフステージをハッキリと意識したわけではありませんでしたが、公認会計士の資格を取得してよかったと思っています。まさか母と一緒に働くことになるとは思いませんでしたが、やがて私も子供ができたりすれば、母と同じような働き方をするようになるかもしれませんね。

カイケイ・ファンをご覧の方にメッセージをお願いします。

福島 この仕事はとてもやりがいのある仕事です。男性はもちろんですが、女性にもチャンスがある仕事です。中小企業の場合、女性が家計を握るのと同様に、社長の奥様が経理を行うケースも多く、女性同士だと信頼も得やすいものです。それに売り上げや利益だけでなく、ワークライフバランスや福利厚生などに沿った女性ならではの視点を求められることも少なくありませんので。
カイケイ・ファン読者の女性の皆さんにも、是非会計業界飛び込んでもらって、女性の視点も活かして活躍していただきたいですね。

(2015年1月9日掲載)

税理士法人 福島会計

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