少し前に、電力会社5社が太陽光発電の電力買取中断を発表したことに対して、太陽光発電の事業者が強く反発し、大きなニュースになりました。
中断の理由としては、買取が申し込まれた全ての電力量を受け入れると、昼間の最大電力の供給量が一時的に需要を上回る可能性があるためとのことでした。どういうことかと言うと、電力は貯めておくことができず、安定的に供給するためには需要と供給のバランスをとらなければなりません。供給過多になった電力が送電線を流れると、家庭などの家電製品が故障し大規模な停電を起こす可能性もあるのです。
供給過剰を引き起こしかねないほど太陽光発電産業に参入し、買取を希望する人が増えてしまったのはなぜなのでしょうか。今回はその背景を見つつ、私たち家庭への影響を考えてみます。
太陽光発電事業に参入する事業者急増のわけ
再生エネルギーの買取制度はその事業者にとってうま味があります。買取の認定を受ければ、国がほぼ無条件で発電した電気を買い取ってくれる、ほぼリスクフリーのビジネスです。そして一番のうま味が利益率の高さ。国は1kWhあたり32円(設置容量10KW、買取期間20年間の場合)という高値で買い取ってくれるのです。この価格は段々と下がってきていて、制度の導入当初はなんと40円でした。
また、国や自治体による補助金制度や、税制面では税額控除または特別償却が受けられます。ビジネスリスクが少なく利益が見込め、導入時には補助金を受けることができ、導入後は税の優遇が受けられる。これはなんともいいことずくめなワケです。
その負担は家庭へと
事業者にとっていいことずくめに見えるこの制度、しっかり家庭にそのしわ寄せが来ています。今回の問題は何と言っても買取価格の高さです。さきほどの買取価格が40円、32円という話にピンと来る人は少なくないと思います。
私たちが支払う電気料金は例えば東京電力管内で従量電灯Bという一般家庭が最も多く利用するプランでは、最初の120kWhまでは1kWhあたり19円43銭、それを超え300kWhまでは25円91銭です。とても単純に考えると、家庭が支払う電気料金よりも買取の価格の方が高いわけです。
ではその差額は誰が負担するのでしょうか。それは電力会社でもなく国でもなく、私たちの家計です。電気料金の請求書の内訳には「再エネ発電賦課金」というものが載っています。これがその差額を埋めるものなのです。
経済産業省の資料によるとヨーロッパでの太陽光発電による電力の買取価格は1kWhあたり20円前後ですので、日本は1.5~2倍ということになります。買取価格は「中立的な委員会が事業者のコストと利潤などを勘案して決定する」とありますが、諸外国と比べて異常に高い買取価格。結局、家庭が差額を負担することになるので、当初は事業者を増やす目的で高く設定した背景が窺い知れます。
今後向かうべき道とは
さてこの賦課金ですが、経済産業省の資料によると一般的な家庭の電力月間使用量300kWhだと225円が1カ月の請求額に加算されます。しかし、現在、国が認定している事業者が全て発電運転を開始した場合には賦課金は935円に跳ね上がります。
巷では脱原発が叫ばれ、著者も原発に頼らずクリーンエネルギーでまかなっていけるのであればそれに越したことはないと思いますが、クリーンエネルギーの推進によって家庭にどんどんその負担がくるこのシステムは手放しに賛同できません。
まずは買取価格の適正化をはかり、供給過多になるほどの状況を改善して、買取の受付を中断することのないよう仕組みを整えていくことが、結果的にクリーンエネルギーをさらに推進していくことになるのではないでしょうか。
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カイケイ・ファン ナビゲーターによるコメント