最近、めきめきと税務調査が増えてきている移転価格、みなさんはご存じですか? 簡単に言うと国境を越えた関連会社間での取引価格が適正かどうかということです。
税務当局が問題視する移転価格は、例えば国境をまたいで親会社と子会社がある場合、親子間の取引の価格を操作することで、所得も操作することです。税率の低い国に多くの所得を認識させ、高い国で少ない所得を認識させれば、その企業グループとして税金を節約することができてしまうのです。ただし、移転価格の調査で追徴課税となると支払う税額が大きくなる傾向があるので注意が必要です。
最近の更正事例のうち公表されている事例で大きな金額のものは、2010年に公表された日本ヒューレット・パッカード株式会社の事例です。役務の提供取引に関するもので、更正された所得額が約470億円、追徴税額が約230億円と巨額でした。
「適正な取引価格」とは
では、関連会社間の取引価格が適正かどうか、具体的にどのようにして判断するのでしょうか。現在、日本で認められている算定方法は棚卸資産(商品など)の取引では独立価格比準法などの方法があります。
あまりに技術的になるのでここでは個々の算定方法には踏み込みませんが、例えば先ほど例に挙げた独立価格比準法は、関連会社間の販売価格と、それと同等のものを第三者に販売したときの価格とを比較して適正かどうかをはかる方法です。これらの方法は企業が内部だけで対応するのには限界があり、多くの企業は税理士法人の移転価格チームにコンサルティングを頼んでいます。
移転価格の調査
次に移転価格の税務調査はどのようなものになるのか見ていきます。まず移転価格調査は一般的な調査と比べて長期間に及びます。大体、1年から3年くらいが一般的なようです。企業の実務担当者にとっては、日々の業務をこなしながら1年以上も税務調査対応をするというのは、はっきり言ってかなり苦痛です。様々な資料を請求されますが、一番大切なものは国外関連企業との取引価格をどうやって決定したのかがわかる資料です。
現在、移転価格に関する資料をあらかじめ準備しておく義務はありませんが、調査が入ると結局準備をしなければなりません。できれば前もって準備しておきたいですね。それから、調査でよく見られる取引は、棚卸資産(商品など)の取引、著作権など無形資産に関するロイヤルティ(使用料)取引、在外子会社に親会社がサービスの提供をするなどの役務提供取引です。しっかり洗い出しを行っておきましょう。
最終的な手段 相互協議
最後に調査の結果、更正を受けてしまい、その内容に不服があるときに取れる手段として相互協議というものがあります。これは申し立てにより日本の国税庁と相手国の課税当局による協議をしてもらうことです。相互協議の申請件数は年々増えていますが、なかなか協議が合意に達する件数は増えないようです。また、相互協議を持ち込む以前に申請をした時点で受理されないケースもあり、最終的な合意までたどり着くのは一握りと言えます。
移転価格は専門的な分野ですが、実務担当の方々は基本的な考え方を知っておくことでリスクを最小限にすることができます。これらに該当する取引があるかどうか日々の業務の中でアンテナを張っておきたいですね。
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