政府は1月14日、「平成27年度税制改正の大綱」を閣議決定しました。今後国会で議論が行われることとなりますが、現在の衆参両院の構成を考えても、このまま成立の可能性が高いとみられるため、企業経営者、また会計人はその内容に注視しています。
法人実効税率20%台を目指す第一歩
今改正で最も注目されるのが法人税の引き下げです。税率は現行の25.5%から23.9%に、法人事業税の所得割は、現行の7.2%から6.0%に引き下げられます。それにより法人実効税率は、34.62%から32.11%となります。
さらに平成28年度には、実効税率で31.33%にまで引き下げ。「平成27年度を初年度とし、以後数年で、法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す」としています。
先行減税ながら、課税ベース拡大も着々
減税分の補填の意味合いの強い課税ベース拡大策としては、大法人の欠損金繰越控除の限度額の引き下げ、そして、法人事業税の資本割・付加価値割の増税、受取配当金の益金不算入の縮小、租税特措法の見直し等も盛り込まれています。
結果、法人税減税額と課税ベース拡大策による増税額を差し引くと、2060億円の先行減税となりました。今後はこの差を縮めていく方向に税制の議論が進むことは間違いありません。
今回は「無風」? 不安がつきない中小企業
このコラムでも何度か指摘していた、中小企業への増税策については慎重な出だしとなっている印象です。今回、課税ベース拡大策の対象となっているのは、おもに資本金1億円以上の大法人が中心です。
また、中小企業の懸念材料だった、平成26年度末までの年800万円以下の所得金額の15%の法人税軽減税率適用については、平成28年度末まで適用期限を2年延長。中小企業の経営者はほっと胸をなでおろしたところでしょうが、延長期間の終了時には再び存廃の議論が浮上することになるでしょう。
自民・公明両党は大綱の中で、「中小法人の実態は、大法人並みの多額の所得を得ている法人から個人事業主に近い法人まで区々であることから、そうした実態を丁寧に検証しつつ、資本金1億円以下を中小法人として一律に扱い、同一の制度を適用していることの妥当性について、検討を行う」としています。
これは、今回大法人に向けられた欠損金の繰越控除の縮小、外形標準課税の拡大のほか、軽減税率、特定同族会社の留保金課税等の見直しにも含みを持たせた表現といえます。軽減税率により今回の法人減税に直接関係しない中小企業、将来の増税の懸念を抱きながら展開を見つめることになりそうです。
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