ユニークな税金= 特定目的のための課税
前年の年末調整で所得税が還付されて喜んでいたのも束の間、翌年の確定申告の最終納付税額や、翌年度の住民税の納付額にがっかりしてしまう人もいるのではないでしょうか。個人に課せられる地方税で、まず思いつくのは前述の住民税ですが、税収が厳しい中、地方自治体の様々な税収確保への取り組みが見られます。
平成12年4月に「地方分権一括法」が施行後、国から地方への権限委譲が進められ、法定外目的税の創設が可能となりました。多くの自治体が導入した法定外目的税の例として、産業廃棄物税がありますが、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。本来、税の負担はその経済的な負担能力に応じて公平であるべきですが、特定の政策目的のために負担を強いたり、その逆に軽くしたりする場合があります。税負担を軽くした最近の例として、少額投資非課税制度(NISA)があります。これは『貯蓄から投資へ』という政府の政策目的を実現させるための税の軽減措置といえるでしょう。今回は、その特定目的を達成するために、ユニークな地方税の取り組みをご紹介したいと思います。
静岡県熱海市「別荘等所有税」
先駆けとなったのが、静岡県熱海市の「別荘等所有税」です。熱海市では、昭和40年代後半より、一戸建別荘やリゾートマンションの建設が増加し、それに伴いゴミ処理や上下水道の整備といった行政需要の増大に対処するため、非居住者にも負担をしてもらうよう昭和51年に導入されました。税率は、延べ床面積1平方メートルにつき年額650円で、別荘を所有していると固定資産税も徴収されますが、熱海市に別荘を所有するとさらにこの別荘等所有税が徴収されます。平成24年度の税収額は、6億円でした。(平成26年4月発表、総務省「法定外税の状況」より)
多くの地方自治体で導入されている「森林環境税」と神奈川県の「水源環境保全税」
「森林環境税」は主に森林整備などに使用する目的の税で、高知県が平成15年に全国に先駆けて制度化した後、導入、検討している自治体が増え、平成24年時点で、「森林環境税」を導入・実施している地方自治体数は33県にのぼっています。森林環境税の多くは法人に課税していますが、個人に課税しているのが神奈川県の「水源環境保全税」です。
「水源環境保全税」は長期にわたる良質な水の安定的確保を目的に、平成19年に施行されました。適用期間は5年間(現在は第二期として平成24年から平成28年までの5年間)、税収規模は5年間で約195億円を見込んでいます。税率は均等割に300円、そして所得割に0.025%の上乗せで、平均すると納税者あたりの納税額は年額約890円となっています。
新たな税の導入はそう簡単ではない-納税者として気をつけること
「別荘等所有税」や「水源環境保全税」は既に導入済みということをご紹介しましたが、導入検討の途中で案が取り下げとなるケースもあります。例えば、東京都杉並区の「すぎなみ環境目的税(レジ袋税)」など、「環境保全」というよりも自治体の「税収確保」の面が強く出てしまうと、住民や政党から反対にあい、導入へ至らない、もしくは導入に至ったとしても廃止となるケースもあるようです。
私たち納税者も、自分の自治体で知らない間に○○税が課されていた、なんてことにならないように、行政がこれから取り組むことに関しては注意を払い、課税目的に納得した上で納税したいものです。
【この記事を読んだ方におすすめのサービス】
≪会計業界の転職はプロにおまかせ!≫無料転職サポートサービスとは?