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【会計士Xの裏帳簿】新聞誤報にみる 年金受給者の確定申告支援の必要性

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確定申告がスタートし、新聞や雑誌、ネットなど各種メディアで特集記事が増えてきました。その中で先日、中日新聞が確定申告に関する記事について、訂正を出しました。間違いが発生したのは、Q&A形式で相談者から確定申告義務の有無について回答、解説する記事です。

給与所得がある場合、年金収入の申告は?

記事で取り上げたのは、高齢者の年金収入の確定申告不要制度について。相談者は、年間約20万円の老齢厚生年金を受給。また、定年退職後に同じ会社に再雇用され、150万円の給与所得については年末調整をしています。

相談者からの「確定申告は必要ですか?」との質問に対し、記事の回答は「必要」というもの。その理由は、年金収入の確定申告不要制度の要件に「公的年金等の雑所得以外の所得が20万円以下」とあり、給与収入が150万円ある相談者は該当しないからだとしました。

しかし、相談者は給与所得について年末調整を受けています。年末調整をしている場合に確定申告が必要となるのは、給与収入が2千万円を超える場合や、2つ以上の会社から給与を受けている場合、給与所得以外の所得が20万円を超える場合などです。

相談者は150万円の給与収入のほか、年金収入が20万円です。年金収入には公的年金控除額が70万円ありますので、それ以外の収入がなければ、給与所得以外の所得はゼロ。つまり確定申告は不要です。そして、記事の主要なテーマである年金収入の確定申告不要制度の適用可否はそもそも問題にならないことになります。

確定申告の時期 迷える高齢者に情報提供を

個人的な話ですが、私も確定申告不要制度について、格好悪い思い出があります。

同制度のスタート前、母から電話がかかってきて「年金の確定申告がいらなくなるそうだけど……」と尋ねられた時、恥ずかしながら新制度についてチェックしておらず、あいまいな答えになってしまいました。税の専門家が年老いた親に情報収集能力で惨敗するという残念な結果に、母もさぞかしがっかりしたことでしょう。

それはともかく、今回の記事で象徴的なところは、定年延長・再雇用による給与所得の要素が入ってきたことで話が混乱し、間違いにつながってしまったことです。高齢者が置かれる状況も多様であり、税務相談を受ける際は慎重を期さなくてはならないことを思い知らされます。

団塊世代の年金受給も始まり、いままで確定申告と無縁であった元会社員の方々が、税務について悩むケースが増えていると思われます。高齢化による税理士業務の変化では、収益性の高い相続税に目が向きがちですが、所得税の確定申告について税理士が情報提供をできる限りすることも大切なのではないでしょうか。

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