ふるさと納税への注目がますます高まっています。その要因が、自治体が提供する「特典」であることは間違いありません。寄付控除の制度趣旨から疑問を呈する声があるものの、税制改正で制度拡充されるなど、さらにこの動きが後押しされています。そんな中、新たな試みが行われました。それは「電子マネー」による特典の提供です。
電子マネーが寄付額の50%付与される
DMM.comは2月、同社の創業の地である石川県加賀市と連携し、ふるさと納税として寄付された金額の50%分を電子マネー「DMMマネー」で還元する試みを始めるとの発表をしました。DMMマネーは、同社のコンテンツ、提携ECサイトでの物品購入等が可能です。(加賀市ふるさと納税(DMMマネー進呈)は諸事情により3月4日に終了しました。すでに申し込んだ方は当初の通りDMMマネーを進呈とのこと)
これは、各自治体が工夫をこらすふるさと納税への「特典」を電子マネーで付与する仕組みといえます。自治体とDMMの契約がどのような形態で行われているかは不明ですが、特典品の調達や発送費用を考えると、自治体にとっては合理的な手法といえます。
控除、マネー還元で、寄付をするほうが得に!?
ふるさと納税は、所得の状況により控除の上限がありますが、おおざっぱにいうと、2,000円を超える寄付を行うと、その超過額が税額控除により戻り、事実上税収が寄付先の自治体に移転する制度。これに「特典」が加わることで、寄付者の負担はさらに少なくなります。
これまで、自治体の工夫を凝らした特典により「控除分を合わせるとほぼ全額(あるいはそれ以上)が戻ってきているのでは?」という事例はありました。そして今回の事例は文字通り「マネー」が還元されるもの。寄付をしたほうが得をするという印象はさらに強くなります。「ついにここまできたか」と感じるところです。
電子マネーの「収入」の申告はどうなる?
そして、今回の事例では、寄付金控除のほかに、新たな税制上の問題もあります。それは、電子マネーの還元により「収入」が計上され、所得税申告をしなければならない可能性です。特産品等の特典でも同様の問題がありますが、電子マネーではいっそう明確になります。
DMMも、特設ページの注意書きで「DMMマネーは、進呈する額によって一時所得として課税対象となる可能性がありますのでご注意ください」としています。
電子マネーは各社から利用価値の高いものが多数発行され、幅広く使われていますが、収入として計上しているケースはまだ多くないのではないかという印象。ビットコイン等での取引の捕捉、課税は当局にとって重要な課題の一つであり、今回、所得税法上の制度である寄付金控除にからめた還元が行われることで、電子マネーの収入も、ある意味で当局の目につきやすくなります。税制上の論点を多分に含んだ今回の試みについては、税理士としても研究の対象となりそうです。
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