事業活動は債権・債務関係の積み重ねです。税理士は、顧問先に対し、売掛金等の残高や入金等、債権管理に関してアドバイスすることが多くあります。しかし、売掛金等の相手先の信用状況を調べることや取引可否の判断などについて助言する業務まで行っている人は多くありません。
まずは売掛管理体制の整備を
売掛金は全体の額だけでなく、個々の債権と入金を対応させないと、現状が把握できません。中小企業では、債権と入金がまったく関連付けられておらず、長い間未回収に気づかなかったという例も結構あります。
売掛台帳の整理やソフトウェアの導入など、債権管理の体制を整備すると、回収が確実にできるかという与信について自覚的になるもの。とくに既存の取引先の支払いが遅れがちになっていることに気づいたり、新しく大きな取引をしたりといった場合は、与信を確実に行わないと最悪の場合、連鎖倒産や詐欺被害の危険があります。
中小企業の与信管理のための手法
中小企業の財務データを把握する手段は限られますが、与信のためにできることを考えてみましょう。
・決算書を提出してもらう
金融機関のように、取引先から決算書、税務申告書を提出してもらうという方法です。 しかし中小企業の決算書は未整備な部分がありますので注意が必要です。
・法人登記簿を取得する
取引先企業の設立年はいつか、事業内容が多すぎるなど不自然な点はないかといったことを調べます。 また、ある時期に役員が総入れ替えになっている場合、休眠会社の買い取り等も考えられます。不動産登記簿で役員の住所地の不動産に抵当が入っているかを調べることも有効です。
・企業調査会社の利用
帝国データバンクや東京商工リサーチ等、中小企業の情報を豊富に持っている調査会社があります。 調べる内容は簡易なものから詳細なものまで、料金が設定されています。取引の大きさ等によって利用を検討するとよいでしょう。
・実際に会社に足を運ぶ
原始的ですが意外と効果的です。実際は存在していない会社であった、という極端な事例はもちろん、機械等の稼働状況、従業員の様子などから、なんとなく危険な「におい」がすることがあります。遠方であっても大きな契約前になるべく一度は会社に赴きたいところです。
税理士も与信管理に積極的提言を
基本的に、会計の仕事は、売掛を立てた後は、返済による消し込みあるいは貸し倒れ損失を計上すること。債権の内容にまで踏み込みたくないという気持ちもわからないではありません。しかし会計の専門家だからこそできることもあります。
債権管理の体制構築を行うと、財務上キャッシュフローの重荷になっている大きな売掛金の存在に気づきます。その際、経営者に与信の状況を確認したり、上に挙げたような一般的な与信状況の調査方法を提案することなどはしておきたいものです。
また、取引先の決算書の財務分析を行ったり、他社とともに自社の財務状況も勘案して与信限度額等の設定の提案をしたりと、税理士の能力の範囲内でできることはかなりあるのではないでしょうか。
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