平成27年度税制改正のうち、すべての事業者の業務に関連し、会計業務に大きく影響するものとして話題になっているのが、領収書をスキャナで電子化して保存、原本を破棄できる制度の大幅な拡充です。改正により原則的にすべての領収書の電子化が可能となったことで、制度の使い勝手は大きく向上しました。
従来の制度はなぜ使えなかったか
従来、スキャナ保存の対象となっていた契約書や領収書は、金額が3万円未満のものでした。しかし、領収書等に限らず、文書の電子化・ペーパーレスによる業務改善は、なるべく例外をつくらず、すべてのものを対象とすることで効果を発揮するもの。金額によって運用が異なることがネックとなり、あまり利用されていませんでした。
改正により、金額基準が廃止され、すべての領収書等をスキャナ保存し、原本を破棄することが可能となります。領収書等の電子化には税務署への申請が必要で、9月30日以後の申請から、制度が適用となります。3カ月前の申請が必要とされているため、来年のはじめころから実務がスタートすると考えられます。
私のまわりでも、適用開始に向け、社内体制を整えている企業がいくつかあり、領収書の電子化が加速度的に増えることが予測されます。ハードルとなる申請をスムーズに行えるよう、税理士が積極的にアドバイスできるようにしておきたいものです。
要望が多いスマホ撮影 さらなる制度改正に期待
大きく進展した電子化に関する改正ですが、「まだ不十分」との指摘もあります。企業や団体から最も不満の声が大きいのが、スマホ等のカメラで撮影した領収書等は上記の制度の対象外となってしまうことです。
報道では、財務省が2016年をめどにスマホ撮影の領収書を認める方向で検討しているといったものも見られますが、写真修整による改ざん等の不正リスクが高まることも事実であり、制度改正には慎重さもうかがえます。
ソフトウェア会社では、領収書をスマホで撮影してクラウドに保存、OCRによりテキスト化するアプリがすでに発売されています。今の時点で、情報管理のためには使えるものの、税務においては原本も保存しなくてはならないことになりますが、話題の「クラウド会計」と親和性の高い技術であるだけに、税務で認められる方向になれば、ソフトの注目度が増すことは間違いありません。
領収書の保管、外回りの社員の経費申請の事務負担などのコストを低減し、業務効率化に資する制度である税務書類の電子化。リスクも勘案しながら、企業活動を後押しするさらなる整備が望まれるところです。
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