サッポロビールが販売するヒット商品「極ZERO」の課税問題が再燃の様相を呈しています。サッポロは、国税局に対し、いったん納税した酒税115億円の返還を求め異議申し立てを行いました。
発泡酒かそれとも第3のビールか
事の発端は、サッポロが2013年に極ZEROを、いわゆる第3のビールとして販売し、国税当局から「待った」がかかったことにあります。同社はこれを受け、酒税の区分を「発泡酒」にして再発売しました。
同商品は糖質、人工甘味料、プリン体ゼロといったコンセプトがうけてヒット商品に。結果オーライで税金の問題は収束したかに見えました。しかし同社は第3のビールとしての発売をあきらめてはいませんでした。社内で再度製法等の調査をした結果、第3のビールとして販売することに問題がないと判断、発泡酒として納税した分の返還を請求するにいたったのです。
もはやだれも理解できないビール類の酒税
ビール類の税制は異様なまでに複雑です。これは、ビールメーカー各社が税額の低い製品を次々に開発し、国税当局がいわば後追いで、製法や原料等、税額が低くなる要件を限定する項目を作ったことに起因しているといわれています。
今後行われることになる、サッポロと国税局との議論は、発酵や醸造等、化学の専門知識を駆使しながら、その複雑な税制における区分がどこにあるかを争う、難解な「空中戦」となります。正直に言うと、私も論点がどこにあるのかつかめません。極ZEROの製法についての情報が乏しいこともわかりにくさの原因ではありますが、おそらく情報があってもわからないと思います。
国税には負けられない戦いがある
ただ、間違いないことは、サッポロの主張は国税にとって絶対に受け入れられないということです。
法人税などの税務調査では、税務当局が更正処分をちらつかせながら、修正申告をうながすことがあります。これは、当局が課税処分をするよりも、「納税者の判断で申告した」という形を取った方が都合がよいため。税法上微妙な課税であっても、自ら納税してくれれば、当局にとっては大勝利となります。
今回のケースでは、いったんサッポロが自主的に納税していますので、当局にとっては、いわば終了した案件。異議申し立てにより「問題が蒸し返された」という思いが強いはずであり、同社の主張を認めることはまずないものと思われます。
今後、サッポロが徹底抗戦するということであれば、国税不服審判所への審査請求、そして税務訴訟に打って出ることになります。訴訟となれば、両者が引くに引けず、最高裁まで争われる可能性が高いのではないかと予測されます。
現在、第3のビールと発泡酒の酒税を増税、均一化することで、ビール類全体の税制を整理する機運もあります。改正が行われれば、今回のような「発泡酒か第3のビールか」という議論もなくなるでしょう。今回の紛争は、メーカーと当局の駆け引きにより極度に複雑化したビール類の課税関係を「清算」する、最終決戦となるのかもしれません。
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