米国公認会計士協会(AICPA)の調査によれば、2000年以降、会計事務所が採用した会計学部の新卒の男女比は半々であるにもかかわらず、パートナーのうち女性が占める比率はわずか19%、そして執行役員クラスではさらに低い14.3%という統計結果が出ました。
AICPAは女性の積極的活用を組織の成長存続に必要不可欠な責務とし、1989年にボランティアの男女会計士たちによる「Women’s Initiatives Executive Committee(女性イニシアティブ執行委員会)」を立ち上げました。キャリアアップにおける機会平等、女性のリーダー職への昇進促進、ライフワークバランスの確立を目指し、様々な活動に取り組んでいます。今回は、AICPAのニュースレター「CPA Insider」より、女性会計士の活躍をサポートする米国会計事務所の取り組みをご紹介します。
ホルツマン・パートナーズの取り組み
監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する総合会計事務所ホルツマン・パートナーズ(米国テキサス州オースティン市)は、The Holtzman Partners Women’s Initiative (HPWI:ホルツマン・パートナーズ女性イニシアティブ)を運営しています。
同事務所は50名程のプロフェッショナルが働いていますが、パートナークラスは皆男性です。マネージング・パートナーのクリス・パーキンス氏は、常々から同事務所の優秀な女性のマネージャやシニア・マネージャが、パートナーへの昇進のチャンスが男性と同様に与えられるように、そして、女性の昇進を阻害する要因があれば解決したいとの思いから、HPWIの立ち上げに至りました。
HPWIの主要な活動は(1)事務所スポンサーの四半期イベントの開催、(2)月例読書会の開催、(3)地元開催の女性対象のネットワーキングイベントへの参加奨励、(4)プロフェッショナルな女性が関心を持ちそうな記事の月次ベースでの提供、の4つです。
(1)の四半期イベントでは有識者を招いてワークライフバランスについての講演を催します。また、(2)の月例読書会では朝食・ランチやコーヒーブレイクの時間を使い、参加者たちが選んだ書籍を1章ずつ読んだ後にディスカッションを行うなど、参加者に大きな負担をかけない範囲で活動しています。
同事務所の女性たちは、個人とキャリア両方の目標に到達できるよう、このHPWIプログラムで事務所がサポートしていると感じており、また、HPWIの執行委員長で監査シニア・マネージャのグレッチェン・レイフェステ氏は、「HPWIプログラムのおかげで、女性共通の目標に皆で取り組むことができる」と述べています。
プログラム導入へのアドバイス
レイフェステ氏は、プログラム導入について次の8つのアドバイスを掲げています。
1. 事務所のニーズとマッチするような中心となる目標を作る
2. 女性だけではなく、男性も参加可能な教育プログラムへの予算を取る
3. 事務所のリーダーからのサポートを求める
4. 女性だけのプログラムにならないよう、男性にも役割を与える
5. 将来の女性リーダー候補がメンター(助言・指導)関係を構築できる機会を作る
6. 繁忙期でも、継続してプログラムの時間を作る
7. チームワークを活用する
8. 小規模のグループから始める
日本でも、女性の活躍推進のために、ネットワーキングや有識者による講演など、大手会計事務所を中心にさまざまな活動が行われており、実際にプログラムに参加されている方もいらっしゃると思います。今回紹介したHPWIは、男性所員やマネジメントも参加・サポートし、事務所の目標を共有しながら、無理のない範囲で事務所と所員双方の成長に取り組んでいる点が、日本でも参考になりそうですね。
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