税理士の仕事の一つに顧問をしている会社の税務調査対策の相談、調査への立会がありますが、税理士も会社と同じ事業者です。自身が税務調査の対象となることも当然あります。しかし、税理士の間では、「税理士には余程のことがない限り税務調査は来ない」という、ある種の常識があります。
アンケートで明らかになる税務調査件数
日本税理士会連合会(日税連)が昨年全登録税理士を対象にアンケートを実施し、今年結果を公表した「第6回税理士実態調査」では、税理士への税務調査のリアルな数字が示されています。平成25年中に税務調査を受けた税理士事務所・法人は、回答者2万5,970人のうちわずか465人。1.8%となっています。
実は、私も自分の事務所の税務調査は経験がありません。周りにも、税務調査を経験したことのある税理士はほとんどいません。
そこで、税務当局の観点で、税理士に税務調査をしない理由を考えてみました。
税のプロなので、しっかり処理している
これは、最も理想的な理由といえます。確かに、税理士は脱税がどれだけ「割に合わない」悪事であるかを知っています。反面調査をすれば一発で露見する、売上除外のような脱税をすることはあまり考えられません。
そして、脱税をしないのは当然として、節税的な税務処理をする際も、専門家として自信を持って行っています。税務調査の際、税理士は、調査官に真っ向から税法理論で挑む手ごわい存在になり得ることも考えられます。税理士も、「自分に調査が来ないのは、当局に恐れられているからだ」と考えると自尊心が満たされるのではないでしょうか。
税理士のビジネスモデルは単純で、脱税の余地があまりない
実は、先に挙げた理由よりもこちらの方が理由として大きい気もします。税理士業務には仕入れがありません。労働集約的で、設備投資も減価償却資産も少ないのが通常。これはつまり、経費・損金処理等で節税の余地が少ないということです。当局にとっても「面白味」がない相手であるといえます。
ただし、税理士事務所で税務調査のネタになる節税手法がないわけではありません。たとえば、税理士事務所と別に設立する会社(いわゆる会計法人)に経理業務だけを請け負わせ、所得を分散するケースは、それぞれの業務を厳密に分けるのが難しいため当局に目をつけられがちです。詳しくはいいませんが、業界では、税理士事務所と会計法人の所得の割合によって税務調査の対象にされるか否かが決まるというウワサが流れています。
税理士は、大して稼いでいない
これが理由だとするとちょっと情けない話です。税理士への税務調査は上記の理由で面倒くさい割に、増差も取りにくい案件。そのくせ稼いでいないのであれば無視したくなるのも当然でしょう。実際、税務調査の大きな分岐点となる、消費税の納税義務者、売上1,000万円に届いていない税理士事務所も結構あります。
しかし、この見解については、「税理士は決して稼げない商売ではない!」と声を大にして反論したいところです。あまり調子に乗って「声を大」にすると、本当に税務調査が来てしまいそうなのですが、もちろん、やましいところは一切ございませんので、調査官の来訪の際は、大いに歓迎(?)したいと思っています。
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