米国や中国のマーケットの影響からか、なかなか日本経済も落ち着かないですね。上場企業全体としては増益の企業も多く、回復傾向と言われていますが、まだまだ業績が厳しい企業もあります。
決算書には「継続企業の前提に関する注記」というものがあります。実務では継続企業=ゴーイングコンサーンからGC(ジー・シー)注記とも呼ばれます。
この注記が付されるのは、企業の継続性に重要な疑義がある場合であり、経営者としては避けたい状況です。今回は、そんなGC注記と重要事象開示について、直近の動向をみてみましょう。
そもそも継続企業の前提とは?
実は会計には三公準という前提があります。三公準とは、
(1)企業実体の公準
(2)継続企業の公準
(3)貨幣的評価の公準
の三つです。会計の前提には企業が一つの実体であること、将来にわたって継続して事業活動をすること、測定尺度として貨幣で評価できることが挙げられているのです。
経営学や経営者の著書などでも「企業は継続することが一番大事」と書かれていることがありますが、実際には10年生き残る会社は一握りとも言われています。
事実、企業はさまざまなリスクにさらされながら事業活動を営んでいます。そこで経営者には決算書を作成するにあたり、継続企業の前提が適切であるかどうかを評価することが求められています。
決算書の作成において、継続企業の前提に関する評価の結果、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象があり、対応をしてもなお重要な不確実性が認められるときには、決算書に継続企業の前提に関する事項を注記する必要があります。この記載が「継続企業の前提に関する注記(GC注記)」と呼ばれるものです。
また、継続企業の前提に関する事項を注記するまでには至らない場合であっても、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるようなおそれのある重要な事項が存在する場合には、有価証券報告書の「事業等のリスク」にその内容を開示することが求められています。こちらは「重要事象開示」と呼ばれます。
具体的には継続的な売上高の減少や連続した損失の計上、営業キャッシュ・フローのマイナス、金融機関への支払遅延や債務超過の状態などを評価して記載をしていきます。
かつては、継続企業の前提に疑義ある事象は、一律に注記することが求められていましたが、現在ではその状況に応じて重要事象開示で済む場合とGC注記までしなければならない場合の2段階開示となっています。
継続企業の前提の注記と重要事象開示の傾向
では、直近3カ年における重要事象開示とGC注記の状況はどうなっているのでしょうか。3月決算の上場企業でみると以下のとおりです。
このようにみるとGC注記の方は減少傾向にありますね。一方、重要事象は平成25年から平成26年にかけて減少したものの、平成27年では増加してしまいました。
上場企業の業績は回復傾向にあると言われていますが、マーケット全体でみると苦戦している企業も少なからずあるようです。
平成28年3月期はどのような結果となるか、下期の動向に注目したいですね。
【この記事を読んだ方におすすめのサービス】
≪会計業界の転職はプロにおまかせ!≫無料転職サポートサービスとは?
≪転職で譲れないポイントを相談&発見!≫無料転職相談会・無料転職セミナー
(文/江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史、記事提供/株式会社エスタイル)