一般酒類小売業免許の需給調整要件緩和で、2006(平成18)年9月より実質的な完全自由化となって以来、一般酒販店の数が減少の一途をたどっています。国税庁の調査によると、2013年の一般酒販店の売上は1兆4,859億円で、2009年の2兆1,920億円と比較すると32.2%の減少、売り場数も2009年は29,427場が2013年の22,280場と、4年の間だけでも24.3%も減少しています。
これは、実質完全自由化による値下げ競争の激化で、多くの一般酒販店、いわゆる「町の酒屋さん」が経営悪化による廃業に追い込まれているためです。
国税庁は、酒類小売業の動向についての情報提供の他にも、経営革新等の取り組み事例の紹介、中小企業施策に関する情報の提供、地域ブランドの確立などを支援しています。今日は一般酒販店の活性化への取り組み事例をご紹介したいと思います。
事例1:新たな販売方式の導入
駅前商店街で清酒とワインの小売店を店主(A氏)夫婦と息子の3人で営んでいましたが、大型量販店やネット販売業者に顧客を奪われ、売上の減少に悩んでいました。
そこでA氏の小売店は専門用語を使わず、わかりやすい手作りの商品案内を店頭に置きました。さらに、店舗前を通る人々に配布し、隔月ですが顧客にダイレクトメールで新商品や酒についての豆知識を書いた手書きのチラシも送付しました。商品種類を増やし、商品の入れ替え頻度を上げ、酒だけでなく女性に人気の高い化粧品などを店舗の入口に置いて、大型量販店との差別化を図りました。
上記の取り組みを継続的に行うことで、既存客からの口コミによる顧客も増えていったとのことです。また、商品の入れ替えの頻度を上げ、酒類以外の商品も併せて販売することにより、酒以外の商品を目当てに来店する顧客の数も増えていきました。
事例2:助成金を活用し店舗改装
B店はC市の助成を受けて、これまでの一般酒販店からワイン専門店にリニューアルするとともに、隣接する倉庫を貸店舗に改装しました。店舗と倉庫の2軒分の助成申請ができ各100万円、合計200万円の助成を受けることができました。貸店舗は、スペイン料理店がテナントとなり、B店で購入したワインを有料で持ち込み可としました。
ワイン専門店への改装に際し、耐震性・温度管理の徹底を考慮し、金属の陳列棚を用いました。壁には一定温度の水を循環させる配管を巡らせ、温度を一定に保つなど設備の充実を図り、陳列棚のPOPには原産国の国旗を表示することで、どこのワインかが一目でわかるようにしました。
そして、レストラン経営者を招き、年2回、ホテルにてワインの試飲会を開催し、新規顧客開拓に努めました。
財政面でも、隣のスペイン料理店からの家賃収入は、助成で賄えなかった改装費に充当させ、債務の早期返済に取り組みました。
これらの取り組みの結果、スペイン料理店との売上増加の相乗効果が見られ、今後貸店舗を2階建てのものに拡張する予定だといいます。
自民党は9月、大型量販店などによる酒の不当な安売りを規制するための、議員立法による酒税法の改正案提出を断念しました。この法案は規制緩和の流れに合っていない、なぜ酒屋だけが守られるのかという周囲からの大きな反発があり、今期の法案成立には至りませんでした。
庶民の楽しみである酒は、安く手に入ることに越したことはありません。「町の酒屋」がディスカウントショップや大型量販店ではできないような工夫を凝らし、より魅力的になって町を活性化させる助けになるといいですね。
【この記事を読んだ方におすすめのサービス】
≪会計業界の転職はプロにおまかせ!≫無料転職サポートサービスとは?
≪転職で譲れないポイントを相談&発見!≫無料転職相談会・無料転職セミナー