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【コラム】監査法人初となった課徴金、その制度とは?

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【コラム】監査法人初となった課徴金、その制度とは?

金融庁は、2015年12月22日、東芝の会計監査において、担当の新日本有限責任監査法人(EY)と公認会計士7名に対し、行政処分を行いました。

3ヶ月間(2016年1月1日から同年3月31日まで)の新規契約締結停止、業務改善命令、そして約21億円の課徴金納付と、これまでにない大変厳しい行政処分となりました。

特に、課徴金については監査法人としては初めてとなり、社会に与えた影響の大きさを物語っています。

課徴金制度の概要

課徴金制度は、証券市場の公正性・透明性を確保し、投資家の信頼が得られる市場を確立するための新しい手段として、金融商品取引法では平成17(2005)年に、監査法人・公認会計士が該当する公認会計士法では、平成20(2008)年に導入されました。

公認会計士法によれば、課徴金制度の対象となる違反行為とは、

(1) 監査法人の社員(又は公認会計士)が、故意に、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明すること

(2) 監査法人の社員(又は公認会計士)が、相当の注意を怠り、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明すること

の2つで、課徴金額については、
(1) 故意により虚偽証明を行ったときは監査報酬相当額の1.5倍に相当する額
(2) 相当の注意を怠ったことにより重大な虚偽証明を行ったときは監査報酬相当額
と定められています。

公認会計士法上の課徴金手続きは、まず内閣総理大臣による調査があり、その後、審判手続開始が決定され、審判官が指定されます。

審判手続を経て、決定案が作成され、審判官は内閣総理大臣に提出します。この決定案に基づき、内閣総理大臣が課徴金納付命令を決定します。

課徴金納付命令に不服のない場合は、2ヶ月以内に国庫に納付することが義務付けられています。

EYにとっての課徴金

EYは、約60年にわたり東芝の監査を担当してきました。今回の処分理由のひとつとして、 長期間に及ぶ馴れ合いの関係が、東芝のコーポレートガバナンスへの過信を生じたという分析がなされています。

批判的な観点からの財務書類の検証が不十分となり、これが課徴金制度の対象となる違反行為に該当したと見なされているようです。

平成27(2015)年6月期の同監査法人の監査業務収入は約776億円で、今回の約21億円の課徴金は、金額的に大きな痛手ではなくとも、この処分により、同監査法人への信頼が損なわれ、顧客流出や報酬引き下げの要求が生じるのは避けられないでしょう。

課徴金制度は、もともとはみすず監査法人(旧中央青山監査法人)の解体により、監査法人が見つからず、上場廃止に追い込まれる「監査難民」の問題回避のために導入された制度でした。

しかし監査法人の規模によっては、課徴金額により、その財務基盤を揺るがしかねない事態に陥る可能性もあり、制度の運用は慎重に行われてきました。

今回の行政処分により、透明性のある決算業務を行っている企業等にも大きな影響が及ぼされることが無いよう、願っております。

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