2016年2月19日の日本経済新聞によれば、上場企業全体の約1割が「監査等委員会設置会社」に移行していることがわかりました。
「監査等委員会設置会社」とは、社外取締役を複数置いて業務執行と監督の分離を図り、監視を担うことで取締役の仕事ぶりや経営を監視する制度です。
その数は380社を超え、移行を決めた380社のうち約半分が東証1部上場で、ヤフーや電通、テレビ朝日ホールディングス、コスモ石油、野村不動産ホールディングスなどが含まれています。
「監査等委員会設置会社」のあらまし
「監査等委員会設置会社(以下、「監査等委」)は、2014年6月に成立、2015年5月に施行した「会社法の一部を改正する法律案」の中にあります。
取締役3名以上(少なくとも2名は社外取締役)で構成する監査等委員会が、監査のほか業務執行者を含む取締役の任免権を有する制度です。
社外取締役の機能を活用するための方策として、代表取締役をはじめとする業務執行者に対する監督機能を一定限度強化することを目的としています。
監査等委員会は取締役会の中の一組織となり、監査等委員は経営の内部から監督する形となります。
今回の制度施行で企業は、従来の会社法で設置を義務付けられていた「監査役会設置会社制度」「指名委員会等設置会社」に加え、今回機関設計された「監査等委」のいずれかを選択できることになりました。
現制度との大きな違い
大きな違いの一点目は、その人員構成です。
新制度では、監査等委員といわれる取締役は3名以上、少なくとも2名の社外取締役(常勤者は不要)を選任する必要があります。現制度の一つ「監査役会設置会社」では、3 名以上で少なくとも2名は社外監査役、かつ常勤監査役が必要であったため、社外監査役に加えて常勤監査役を選任する負担がありました。
また、現制度では各自が監査権限を有する監査役でしたが、新制度では監査等委員会自体が監査権限を有し、その委員である取締役は会社の内部統制システムを活用して組織的に監査活動を行うことを想定しているため、常勤監査役は不要としています。
そして二点目は、任期です。
新制度は2年です。「監査役会設置会社」の4年に比べると、柔軟性がみられます。もう一つの現制度である「指名委員会等設置会社」における監査委員の任期は1年と短く、監査の有効性が損なわれるのではないかという問題点がありますが、その点を考慮したうえで、「監査等委」では2年に設定されています。
三点目は、監査等委員には取締役会における議決権を持つという大きな特徴があります。
取締役への権限委任についても、「監査等委」は取締役の過半数が社外取締役である場合、または定款で定めた場合には、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができます。これにより、取締役会の負担を大幅に軽減し、迅速な意思決定が可能となります。
今後の動向
「監査等委」は、監査等委員である全員が取締役であり、代表取締役の任免権を有する点において外国人株主になじみが深く、評価も得られやすいといわれています。
また移行は、企業負担が小さいため業種の偏りなどもなく、大企業から中堅企業の事例も多く見られます。そして、上場企業に限らず、将来IPOを目指す企業にとっても上記の点から、上場前から監査等委員会設置会社に移行する企業も増加するとみられています。
ただ「監査等委」は、完全なガバナンス制度というわけではなく、選任される人物が適切でなかったり、審議の客観性や透明性が確保できなかったりすると何のメリットも享受できません。新制度に移行してもしなくても、実質的な運用が評価の対象となることには変わりないでしょう。
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