東京に本社を置く、ある建設会社が3月、施工不良が見つかった横浜市のマンションの全棟建て替えを決定し、その費用や住民の仮住まい費用などを偶発損失引当金として追加で計上するため、2016年1~3月期に特別損失59億円を計上すると発表しました。
今回のマンション施工不良に伴う損失は、累計で約160億円にのぼり、2016年3月期通期の連結純利益見通しは119億円(前期比2.2倍)と、従来の予想から10億円引き下げることを余儀なくされました。下方修正の経営責任を取るため、同社は4~6月の役員報酬を1~2割カットする予定です。
ここ数カ月の間、同社以外にもマンションの施工ミスのニュースが報じられていますが、これらの偶発的債務は、会計上は特別損失にあたります。今回は、この特別損失について取り上げてみたいと思います。
特別損失とその例
特別損失とは、特別な要因で偶発的に発生する、本業の営業活動とは直接関係のない損失を指します。経常的に発生する損失ではないため、損益計算書上では経常利益の下に位置しています。
神戸大学大学院の北川教央准教授の統計によれば、2013年3月期に特別損失を計上した日本の上場企業の割合は90%を超え、さらに計上額の平均は総資産の1%にものぼり、実に多くの上場企業が特別損失を計上しているのがわかります。
特別損失の例として、地震・火災などといった災害による損失、労働争議・訴訟・リストラに関する費用、不動産の売却損、固定資産の減損損失や有価証券の評価損などがあります。
他社の施工不良マンション費用に関する取り扱いは
2015年10月、神奈川県の分譲マンションで虚偽データに基づいた工事が行われ、複数の杭が地中の強固な地盤に届いておらず建物が傾いている不祥事が発覚しました。
施工した建設会社では、施工不良に関する費用は、現時点では合理的に算定・見積もりができないことから、何も計上していません。しかし、二次下請け業者の建材会社が、2016年3月期の第3四半期決算で、杭工事関連損失として12億6,400万円を計上しています。
この他にも2016年3月25日、愛知県の高級分譲マンションで耐震設備の「構造スリット」(すき間)に施工不良があることが判明。建設したゼネコンがその事実を認め、補修工事をしていることがわかりました。同社の担当者は新聞社の取材に対し、「協議中なのでコメントできない」としています。
名古屋市建築審査課の担当者は「計画と違う施工は問題」とし、国土交通省は担当者も「耐震性に問題があるなど建築基準法に違反した場合、施工業者に業務改善命令や営業停止処分を出す可能性もある」としており、財務上何らかの影響を受けることは間違いなさそうです。
間もなく3月期決算が発表されます。マンション建設に関わった当事者間での責任・費用負担割合の件もあり、建て直し費用の算定が容易ではないことは想像できますが、それぞれのゼネコンが、どのような会計処理や開示方法を取るかに注目したいところです。
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