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【コラム】伊勢志摩サミットで特別会計から一般会計に繰入! 自治体会計のおさらいと、過去の不正事例

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来る5月26〜27日に、三重県志摩市の賢島で伊勢志摩サミット(主要7カ国首脳会議)が開催されます。
三重県は3月29日、伊勢志摩サミットによる直接的な経済効果が日本全体で約1,071億円となり、うち三重県は約480億円になるとの中間試算を発表しました。
また大和証券による試算では、伊勢志摩サミット効果による観光消費額が5年間で累計1,750億円とされ、2008年7月に開催された洞爺湖サミットの10倍以上になると予測しています。

このような経済効果が期待される中、2016年2月15日の中日新聞によるとサミットの予算額は93億400万円。そのうち国の財政支援38億9,500億円、寄付金4億5,000億円があるが、県費11億2,800万円、県債32億9,100万円、県の貯金からの繰越金5億2,900万円の、合わせて49億4,800万円が三重県の負担になっているようです。
2016年3月2 日の伊勢新聞によると三重県の財政は厳しく、2016年度の一般会計当初予算案に、企業庁が所管する水道事業、電気事業の両特別会計から繰入金として55億円を計上するとのことです。
ここでは、地方自治体の会計(一般会計と特別会計)の解説と、過去の繰入による不正事例を挙げてみたいと思います。

一般会計と特別会計とは

国や地方自治体には、大きく分けて「一般会計」と「特別会計」という二つの財布があります。
一般会計は「一般的な行政にかかる経費を扱うもの」を指し、具体的には教育・福祉・土木工事など、基本的な行政の経費をまかなうために、所得税や消費税などの税金を財源としています。

特別会計は、一般会計から切り離して独立して行われる会計制度で、公立病院や下水道、国民健康保険などの事業がこれに当てはまります。
特定事業のための予算なので、財源は原則として、その事業に関連してのみ使われることになりますが、一般・特別会計間で相互に資金運用をするために、繰入・繰出が行われています。
一般・特別会計はそれぞれを定めた法律により、違う処理になる場合があります。
例えば、年度末に「剰余金」(歳入-歳出がプラス)が出た場合、一般会計ではその2分の1以上を地方債の繰上償還財源に充当し、残りを翌年度の財源にすることができます。
特別会計では、それぞれの特別会計の積立金としたり、翌年度の予算にしたりすることができます。

繰入による不正事例

2007年3月に353億円の赤字を抱えて、事実上破綻を発表した北海道夕張市は一般会計と特別会計の間で貸付と償還を繰り返し、見かけ上、帳尻を合わせ巨額の赤字を見えにくくしたと指摘されています。
その後、国の管理下に入って353億円の借金を返済していくことが決められ、2009年には財政健全化法が施行されて、2010年に日本で唯一の財政再生団体となりました。
夕張市の炭鉱閉山の処理費用、観光・リゾート開発とその関連費用の増加、そして2001年の「産炭地域振興臨時措置法(産炭法)」失効、国の行財政改革などが夕張市の財政悪化を招いたといわれています。北海道は当時の財政制度上は違法ではないとして、夕張市の会計間貸付・償還の繰り返しを事実上黙認していました。

総務庁の統計によれば、三重県の財政力指数は2012〜2014年度の平均が0.56076と、全国では第14位に当たり、それ程悪くはありません。
中村進一三重県議会議長は、3月1日に開かれた定例記者会見で、一般会計が特別会計から55億円を繰り入れる点について「制度的にはあり得ることだが、長期的に見てうまく収まるのかということをチェックしていかなければならない」と繰入後のフォローの必要を述べています。
熊本地震などの影響もあり日本経済全体の横ばい状態が続く中、今回の伊勢志摩サミットが、地域経済を活性化させ、三重県のさらなる財政力強化につながることを願います。

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