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【コラム】安いお酒が買えなくなるかも? 酒税法等改正の背景

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【コラム】安いお酒が買えなくなるかも? 酒税法等改正の背景

5月27日の参議院本会議で、酒類の過剰な安売りを規制することなどが盛り込まれている「酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律」が、賛成多数で可決・成立しました。
同改正法は、量販店などの安値攻勢で苦境に立たされている、街の小売店を救済する狙いがあります。これまでも、国税庁が販売価格の合理性などを目的に定めた「取引指針」がありましたが、法的拘束力がなく、廉売に歯止めがかかっていませんでした。
改正では、財務大臣が酒類に関する新たな「公正な取引の基準」を定めることとなっています。規制の基準については、国税庁の指針を踏襲し、仕入れ価格を下回るような過度な安売りを規制対象とする方針です。酒類製造業者等が基準を守らない場合は、指示や命令などにより改善を求め、それでも従わない場合は、業者名の公表や酒類販売免許が取消になる可能性もあります。
それでは、これまでの酒類規制緩和の経緯と、法案成立の背景を見てみたいと思います。

酒販売における規制緩和の歴史

家庭で梅酒などを作ることは、今と同様に昔から行われてきましたが、実は1961年までは当時の酒税法でお酒の自家醸造は禁じられていました。1962年の法改正により緩和されましたが、果実酒を作る際には「アルコール度数は20度以上の蒸留酒」「販売しない」「自家消費用」「法律で規定するものは混ぜない」など、厳しい条件があります。

既存の小売業者を保護し酒税の安定した賦課徴収を図るために、新規参入者に対しては酒税法に基づく厳格な制限が課されていました。しかし、2001年に酒販小売業者との間には一定の距離を置くという規制の「距離基準」が、2003年には販売地域の人口に応じて酒販小売業者の免許数を制限する規制の「人口基準」が廃止され、規制は緩和されていきました。
いずれの規則も、新規の小売業者を制限して既存の小売業者を保護することが目的でした。

法成立の背景

2016年3月に国税庁が発表した「酒のしおり」にある酒税の年間税収額を見てみると、1997年から減少傾向にあります。ピークである1994年の約2.1兆円に比べ、直近の2014年は約1.3兆円と減少しています。
お酒の過剰な安売りが規制され、実質値上げとなれば、家計を圧迫するので消費にも影響し、酒税の税収額の減少が予想されそうですが、実際の影響は少ないと見られています。

現在の量販店は、メーカーへの大量発注でコストを削減しています。さらに、街の酒店と比べると、ビールの場合メーカーから受け取る販売奨励金が1本当たり1~5円程度多いため、安価での販売が可能になっているのです。これは酒税法改正後も変わらないようです。

今回の法改正は形式的な規制強化で、実際は大きな変化はないと見られています。消費者にとって、引き続き安いお酒が楽しめることは喜ばしいですが、改正を要請した全国小売酒販組合中央会はこの改正法の効果に満足できるのか、疑問が残るところです。

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