2016年6月、イギリスが国民投票にて欧州連合(EU)離脱派が勝利しました。イギリスのみならず内外でEU残留派の勝利を予想していただけに、この投票結果は世界中を驚かせ、翌日の株式・為替市場を混乱させました。
EU離脱賛成に投票した国民のうち、高齢者が実に6割にのぼり、イギリスの未来を無視した決断に、若者をはじめとする残留派はこの結果を批判し、イギリスのEU離脱「ブレグジット(Brexit、Britain(英国)とExit(離脱)の造語)」に倣い、「ブレグレット(Bregret、Britain(英国)とRegret(後悔)の造語)」と揶揄しています。
投票する内容こそ違うものの、今回のイギリスの国民投票は、1年前のギリシャにおける、EUが求める財政緊縮策への国民投票を彷彿とさせます。その後、ギリシャはどうなったのでしょうか?
国民投票から1年、ギリシャの今
2015年7月のギリシャ国民投票では、EUの提示する財政緊縮策に対し「反対」が約61%と「賛成」の約39%を大幅に上回ったものの、その後のチプラス首相の手のひら返しにより緊縮策の受け入れが決定してからおよそ1年が経ちました。
ギリシャでは現在、付加価値税(VAT)はこれまでの13%からなんと24%に跳ね上がり、また所得税率も法人・個人ともに引き上げられました。その他にたばこ、酒類、通信料金、有料テレビ、ガソリン、公共交通など幅広い分野で増税や値上げ行われています。
しかし、構造的な背景のほか、歴史的背景から税金を踏み倒すことに罪悪感のない国民性もあり、脱税がまん延しています。
ギリシャがEU離脱する可能性は
ギリシャ政府は、7月20日に償還を迎えた国債について、6月に受け取った75億ユーロ(約8,530億円※以下8月19日現在)の追加融資を活用し、欧州中央銀行(ECB)に15億4,000万ユーロ(約1,751億円)を支払いました。ユーロ圏内のその他の中央銀行が保有する政府証券の償還分などを含めると、この日の支払総額は26億4,000万ユーロ(約3,002億円)となりました。
ギリシャの債権者は、5月に103億ユーロ(約1兆1711億円)の追加融資と3,210億ユーロ(36兆4977億円)にのぼる同国の債務負担軽減を公約しましたが、前述の緊縮策に加え、ギリシャ国内での預金引き出し制限といった資本規制は継続しています。そもそもギリシャが借金まみれになったのは、EU加入による通貨統合により起こったユーロバブルのせい、と国民の不満は蓄積するばかりです。
しかしながら、もしギリシャがユーロを離脱し通貨をもとの「ドラクマ」に戻したら、イギリスのユーロ離脱どころの話ではないでしょう。
財政破綻しかけているギリシャ通貨の価値は当然低いことからインフレとなり、国民の生活は成り立たず、今よりも悲惨な未来が待ち受けることが容易に想像できます。国民の強い不満があっても、結局はEUからの厳しい条件を受け入れ、しがみついていくしか生き残る方法がないように思えます。
7月18日のロイター通信によれば、アテネを訪問中のEU欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は同日、ギリシャは信用を回復し、一段の債務軽減を得るために、これまでに合意した改革実施の手綱を緩めることがあってはならないとの考えを示しました。自国そしてEUへの不満が鬱積する国民をなだめながら、EUに対しては友好的な態度で厳しい条件を行動で示して行く、今後のチプラス政権の手腕が問われそうです。
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