産経新聞の報道によれば、日本政府は8月8日、内閣改造後初めてとなる経済財政諮問会議を開きました。民間議員は新内閣に対し、名目国内総生産(GDP)600兆円の実現に向け、働き方改革などを着実に進めていくよう要望しました。そのうちの重点課題として、配偶者控除と配偶者手当の見直しに関し、年内に結論を出すよう政府に求めました。
ここでは、配偶者控除を適用するために超えることのできない「年収の壁」と、現在議論されている新しい控除について触れてみたいと思います。
パートで働く既婚女性における「年収の壁」
経済財政諮問会議で、民間議員が配偶者控除や配偶者手当の見直しについて、期限を明示して対応を求めたのは異例のことで、今後、議論が本格化していくことが想定されます。
以前から配偶者控除については、「女性が働きやすい税制・社会保障制度の実現」という点において、さまざまな議論が取り交わされてきました。
財務省によると、2015年度における配偶者控除の適用人数は約1,500万人で、年間約6,000億円の税収減につながっており、「一億総活躍プラン(政府が今年6月に閣議決定した、女性や高齢者の就労促進を目指す政策)」を妨げる原因にもなりかねないと考えられています。
いわゆるパートで働く既婚女性の「103万円の壁」「130万円の壁」という言葉を、多くの人々が耳にしたことがあると思います。
「103万円の壁」は、妻の年収がパートなどの給与収入だけの場合、年収103万円以下であれば、38万円の「基礎控除」と、最低65万円の「給与所得控除」が収入から控除されるため、結果妻の所得税額はゼロということになります。
「130万円の壁」は、妻の年収が130万円未満であれば、夫の健康保険の「被扶養者」となるため、健康保険料は夫の負担だけで加入できます。また公的年金でも国民年金の第3号被保険者になるため、保険料の自己負担なく加入でき、将来に老齢年金を受け取ることもできます。
そして2016年10月から、新たに「106万円の壁」が加わります。社会保険(健康保険・厚生年金)適用の基準が拡大され、一定の要件(勤務時間が週20時間以上、1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上などの5項目)をすべて満たす場合、パートタイマーでも社会保険への加入が義務づけられました。
これらの「壁」のせいで、多くのパートで働く既婚女性は、実際には働けるにもかかわらず、年収が「壁」を超えないよう、年末が近づくにつれて意識的に就労時間を制限するため、パートタイマーを抱える企業は日頃から要員確保に頭を悩ませてきました。
配偶者控除の今後……「夫婦控除」とは
政府税制調査会は、9月から始まる税制改正論議の中で、専業主婦のいる世帯を優遇する配偶者控除を見直し、「夫婦控除」の導入を検討する方向でいます。
「夫婦控除」は、妻の年収にかかわらず夫婦で一定額を控除できる仕組みで、夫婦の合計所得に税制上の優遇を設けるため、これまでのような「壁」を超えても控除が受けられ、共働き世帯にも適用できるメリットがあります。控除対象は夫婦の合計収入が一定以下の世帯に限定される見通しですが、今後、収入額の線引きについて議論される予定です。
配偶者控除から置き換えられる新制度は、配偶者の働き方に中立的な制度であることと、「壁」にとらわれない、積極的な就労につながることを期待したいものです。
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