東芝やオリンパスの粉飾決算など、不正会計は後を経ちません。世間からの監査の質に対する目が厳しくなる一方で、監査人は不正を発見する義務はないものの不正会計が発覚する毎に監査の業務工程が増大し、なり手の少ない若手の会計士たちにしわ寄せがきています。
そこで、Big4と呼ばれる大手監査法人は、監査業務の効率化を図るために人工知能(AI)を使った監査システムの開発に着手しています。今回は、AIでカバーできる監査業務と、大手監査法人における最新のAI監査開発動向をご紹介したいと思います。
AIとは? AIでカバー可能な監査業務とは?
1950年代に研究開発が始まった人工知能(AI)ですが、1960年代には「イライザ(簡略な問題に対処する対話システム)」が開発され、80年代には「エキスパートシステム(専門的な知識を体系的に蓄積し、専門家のような判断を下す)」を開発、そして現在では将棋やチェスのプログラムといったディープラーニング(自律的に特徴やルールを学習し、自動的に判断しアウトプットする)など第3次ブームを迎えています。
そもそも、AIとは何なのでしょうか。一般社団法人人工知能学会によれば、AIの研究において、(1)人間の知能そのものを持つ機械を作ろうとする立場と、(2)人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする立場があるそうです。しかし多くの研究は(2)の場合が多く、アニメや映画などに登場する、人間のようなロボットの研究がすすめられているわけではありません。
そうなると、AIが監査業務として行えそうな範囲として、現在のところでは実証手続や内部統制の検証、評価性を持つさまざまな計算の実行や、過去の監査実績をビックデータ化することによる、将来の監査手続の予測、またクライアント企業への往査を減らし、インターネット環境で常時コミュニケーションや証憑・データのやり取りを行うリアルタイムな監査の実施などが考えられています。
EYとPwCのAI監査開発動向
新日本有限責任監査法人(EY)は、昨年11月21日、複雑化する企業のビジネス環境の変化に対応し、より深度ある監査を実施する新しい仕組み「Smart Audit」の実現を推進する研究組織、アシュアランス・イノベーション・ラボを設置したと発表しました。2~3年後の実用化を目指し、AIを活用することで不正会計を効率的に防ぐとともに、会計監査の質を高めていくことを狙っています。ラボは、経営執行役員をトップとして、公認会計士、コンピュータサイエンティスト、データサイエンティストを中心に80名ほどの体制でスタートし、今後はEY Japan全体で連携して活動を広げていく方針だということです。
PwCあらた有限責任監査法人は昨年10月21日に、AI監査研究所を設置したと発表しました。会計監査業務における人工知能の可能性について、新たな価値創造による監査品質の向上、業務の効率化・自動化を実現するための調査研究を開始するとのことです。
各監査法人とも、何らかの形でAIの研究に着手しているようですが、現段階では、最終的なチェックは人間の会計士が行わなければならないという前提のため、監査業務の効率化がどこまで進むかはわからない点が多いとのことです。ただ、AI研究の進歩は目覚ましく、これまで人間の会計士にしかできないと思われていた業務が、いきなりAIに置き換え可能になることがあるかもしれません。
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