政府・与党は、現在3つの税率に分かれているビール類の税率を、2019年度から段階的な変更に着手し、2026年10月には一本化する方向で調整に入ったそうです。なお、ビール類の税額変更は景気に影響を与えることが懸念されるため、景気の状況次第では税額の変更を行わないことする、いわゆる「景気条項」を盛り込むということで最終調整しているということです。
なぜこのような議論が生じているのでしょうか? それは、ビール業界の競争力強化と税収の確保が目的のようです。
ビール類に関する酒税の現状
ビール類に関する酒税の現状について簡単におさらいします。
酒税とはその名のとおり、酒類に対して課税される国税のことです。平成26年度における酒税収入は1兆3,410億円で、これは我が国の国家予算のうち、収入に占める割合の約1.4%程度となっています。
ビール類とは、酒税法上「発泡性酒類」に分類されるアルコール飲料で、具体的には「ビール」「発泡酒」及び「その他のアルコール類」をいいます。ビールとは、アルコール分が20度未満のもので、麦芽・ホップおよび水を原料として発酵させたもの。または、アルコール分が20度未満のもので、麦芽・ホップ・水・および麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの。ただし、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の10分の5を超えないものです。発泡酒とは、麦芽比率の低い発泡性酒類などのことを指します。ちなみに、発泡酒にスピリッツを混ぜて製造される「その他のアルコール類」は、いわゆる「第3のビール」という名称で知られています。
酒税法では、ビール類をビール、発泡酒、第3のビールの3つに分類し、その分類で課税額が異なっています。現在、350ml缶1本で考えると、ビールは77円、発泡酒は47円、第3のビールは28円と定められています。我が国の酒税は諸外国に比べて高く、特にビールの酒税負担額で比べてみると、ビール業が盛んなドイツの約19倍、アメリカの約9倍、フランスの約5倍で、非常に高額になっています。
ビール税の一本化を求める理由について
現在議論されている、ビール税一本化が求められている理由についてですが、製造者と財務省双方に狙いがあるようです。
(1) ビールメーカー側の事情
酒税が比較的安い発泡酒や第3のビールは、消費者の需要が伸びているので、そちらの商品開発をメインにしている企業が増えています。その結果、ビールの商品開発が後回しとなって我が国のビールの国際競争力が、価格的な面だけではなく、その味覚的な面においても相対的に低下していくことが懸念されています。
(2)財務省側の理由
発泡酒および第3のビールの開発に力を入れることで、税額の高いビールの消費量が停滞してしまい、ビールの酒税が減少傾向にあります。ビール類の酒税を一本化することで税収の減少を食い止めようとしています。
ビール税一本化が実施されれば、ビール、発泡酒、第3のビールが55円程度に統一される予定です。ビールメーカー側も、ビールの商品開発に力点を移していく可能性が高くなり、ビール愛好者にとっては、より魅力的なビールが期待できるという点で好ましい状況にあります。逆にいうと、今まで企業努力を重ねてきた発泡酒と第3のビールの価格が上がり、「ビールの値段が高かったからこちらを飲んでいた」という消費者が、ビール購入に傾くことが懸念されます。
ビール類の酒税一本化の実施に向けて、景気条項が盛り込まれていることを忘れてはいけません。景気の低迷を理由に実施が延期されることになれば、ビールの国際競争力の強化につながる機会を逃してしまいます。政府・与党には、今回の議論を短期的な景気対策や政争の具として用いるのではなく、大局的な観点からの検討を期待したいところです。
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