金融庁は、顧客から預かった資金を運用する、機関投資家のあるべき姿を示す行動指針である「スチュワードシップ・コード」の受け入れ表明をした機関投資家リストを2016年12月に公表しました。
現在のスチュワードシップ・コードは、2014年2月に策定・公表されたものです。英語でスチュワード (steward) は執事、財産管理人の意味、そしてスチュワードシップ・コード(stewardship code)は、直訳すると「財産管理者の心がけ」という意味で、上記のリスト数は214にのぼっています。
スチュワードシップ・コードの成り立ち
英国では、金融機関による投資先企業の経営監視など、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の構造が不十分だったことが、リーマン・ショックによる金融危機を深刻化させたと考えられています。その反省から、2010年に金融機関を中心とした、機関投資家に対する行動指針を策定しました。
求められる具体的な行動として、投資先企業の経営モニタリング、議決権行使の方針設定と結果の開示、ガイドラインの順守状況の運用委託者への定期報告など7つの原則を盛り込んでいます。
日本では、2015年6月30日に閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2015」において、2014年策定のスチュワードシップ・コード、そして2015年6月に適用開始となったコーポレートガバナンス・コードの普及・定着を図るため、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(以下、フォローアップ会議)」が設置されました。この会議は、上場企業全体のコーポレートガバナンスの更なる充実に向け、必要な施策を議論・提言することを目的としています。
スチュワードシップ・コード改定で期待される効果
スチュワードシップ・コード改定には2つの大きな柱があります。
一つ目は、機関投資家の保有株についての議決権行使結果公表の充実です。現行のスチュワードシップ・コードでは、議案の種類ごとに整理・集計する形で、議決権行使の結果の公表が求められていますが、一部の業態において、議決権行使結果の集計を公表している機関投資家の割合が少ないとの指摘がありました。
11月8日に開かれたフォローアップ会議では、議決権行使の透明性を確保する上で、機関投資家等において、まずこのような公表を行うことが重要であると述べています。
また、議案種類ごとの議決権行使結果の集計ではなく、議案ごとの公表へと範囲を拡大することで、機関投資家等が、自らの活動について最終受益者への説明責任を果たし、透明性の向上を図ることができると提言しています。
二つ目は、機関投資家の「利益相反」防ぐために、機関投資家自身のガバナンスの強化を挙げています。現行のスチュワードシップ・コードでも、利益相反が起こらないよう、管理の方針を策定し公表すべきだとする原則がありますが、具体的な記載がありません。
このためフォローアップ会議では、機関投資家は、議決権行使や対話に重要な影響を及ぼす利益相反が生じうる局面を具体的に特定し、それぞれの利益相反を回避したり、その影響を実効的に排除したりするなど、最終受益者の利益を確保するための措置について具体的方針を定め、公表すべきであると意見を述べています。
金融庁は今回の改定で、企業が持続的な成長のための議決権行使や、投資先企業と建設的に対話ができるようになれば、最終受益者の利益の最大化に注力するだけでなく、国民生活の向上や、成長分野への資金の流れをより強固にし、経済全体の好循環が期待できると考えています。
機関投資家が投資先企業と、取引関係のしがらみにとらわれない仕組みづくりに期待したいところです。
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