2017年1月に個人型確定拠出年金制度が改正され、より多くの人が資産運用できるようになりました。この規制緩和に合わせ、今まで「401k」や「DC」などの別名で呼ばれていましたが、個人型確定拠出年金を意味する英語「individual-type Defined Contribution pension plan」を略した「iDeCo(イデコ)」という愛称で統一されました。iDeCoの改正もあり、企業型確定拠出年金制度を導入する企業も増加しているようです。
2014年3月末の時点で約460万人が企業型DC(確定拠出年金制度の略)を利用しています。年金として将来に備えられるだけではなく、節税につながるという大きなメリットがあることから、この制度の存在感はさらに大きなものとなっていくでしょう。
企業型と個人型の違い
企業型と個人型の共通点は、拠出した掛金の運用は自分で行えることです。逆に2つの大きな違いは、企業型は企業の規約に基づいて拠出し、掛金は企業が負担すること。企業側が会社の損金として処理するケースもあれば、従業員が一部掛金を負担するケースもあります。
iDeCoは、自分で掛金の金額を決めて拠出します。掛金は全額所得控除の対象なので、確定申告や年末調整で税金の還付が受けられます。
また、企業型年金の規約に「企業型に加入していても個人型年金へ加入ができる」とあれば、両方に加入することも可能です。
企業型と個人型の違いを表にしてみました。
企業型 | 個人型 | ||||
企業年金制度あり※1 | 企業年金制度なし※1 | 企業年金制度なし※1 | 自営業者など | ||
加入 | 対象者 | 60歳未満の従業員など※規則により65歳まで加入できる場合もある | 60歳未満の厚生年金被保険者 | 60歳未満の第1号被保険者 | |
方法 | 原則、全員加入。規約で要件を定めた場合は規約に基づく | 加入は任意。国民年金基金連合会へ加入する | |||
拠出 | 拠出者 | 企業(事業主)※2 | 加入者本人 | ||
毎月の拠出限度額 | 27,500円 | 55,000円 | 23,000円 | 68,000円 | |
納付方法 | 企業が納付 | 給料からの天引き、または口座振替 | 口座振替 | ||
運営にかかる費用負担 | 企業または加入者のどちらが負担するかは規約の定めによって異なる | 加入者本人が負担 | |||
運用 | 加入者本人が行う | ||||
給付 | 規約に定められた受取方法から選択して受け取る | 5年以上20年以下の範囲で指定した期間年金で受け取る。または、一時金として受け取る。(年金と一時金の併給もあり) | |||
受給権 | 少なくとも勤続3年で付与される | 拠出時から受給権あり | |||
運営主体 | 企業(事業主) | 国民年金基金連合会 | |||
運営管理機関 | 企業(事業主)が選定する | 加入者本人が選択できる | |||
資産管理機関 | 企業(事業主)が選定する | 国民年金基金連合会(事務委託先金融機関) |
※1厚生年金基金や確定給付企業年金などを指しています。
※2会社の拠出する掛金に上乗せして、加入者自らが掛金を拠出できることもあります。
企業側の加入スケジュール
従業員のなかに加入希望者がいれば、まずは事業所登録を行うことになります(すでに事業所登録番号を保有されている場合は不要)。さらに労使合意は必須です。そのようなことも含め、本格的な運用開始まで6カ月以上かかります。
運用までの流れは以下のようになります。
現行制度の見直し、制度概要の検討、決定
↓
従業員への説明、協議、承認
↓
運用管理機関、運用商品の検討、決定
↓
企業型年金規約の申請、承認
↓
従業員にセミナーなどを開催
↓
運用開始
企業にとっての企業型DCのメリットは、拠出金がすべて損金扱いになる、掛金の追加負担リスクがない、退職給付債務の対象にならないことです。加入した従業員のメリットは、転職、退職したとしても次の確定拠出年金へ持ち運べる、個人の年金資産が明確になる、所得税がかからないなどです。しかし、注意しないといけないこともあります。それは、原則として60歳までは途中で引き出しができないこと、加入者が運用の責任を負い、給付金は運用によって決まることです。
2012年1月から、一定の範囲内なら加入者が事業主の掛金に上乗せできる「マッチング拠出」が開始されました。会社の掛金との合計が、拠出限度額の月額55,000円(企業年金を併用している場合は月額27,500円)を超えることはできませんが、全額が所得控除の対象になるので、所得税・住民税が軽減されるなどの節税効果があります。
いくつかのリスクもあるものの、節税をしつつ将来に備えることができる企業型DCは、うまく利用することで大きなメリットが得られる制度です。ただし、さまざまな金融機関が運用商品として扱っているため、加入を考えている企業は入念な比較と検討が必要になります。
公認会計士として顧客には税制上のメリットやデメリットをしっかりと伝え、後悔のない企業型DCを選んでもらえるようにサポートすることも、大切な仕事の一つではないでしょうか。
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